玄関へと至る小径に展示された遠藤湖舟さんの作品は回りの風景と調和しています=京都市上京区の有斐斎弘道館 (写真・田中幸美)

​​《京都》写真家の遠藤湖舟さんが弘道館で写真展 5月13日まで


 水面に映し出された植物や建物などあらゆるものが水とともにゆらぐ一瞬を切り取った作品「ゆらぎ」シリーズで知られる写真家、遠藤湖舟さんの写真展「水明自在~時空を遊ぶ~」が5月13日まで京都市上京区の有斐斎弘道館で開かれています。
 さまざまな表情の月や太陽などを情感たっぷりに切り取った天体作品をはじめ、ゆらぎの作品など、小さいものは15㌢角から大きいもので畳3面分まで約60点が屋敷内だけでなく、露地庭などに展示されています。

さまざまな展示方法を試みる遠藤さん


 会場となる有斐斎弘道館は、江戸中期の儒学者、皆川淇園が1806年に創設した学問所跡に、明治期に建てられた数寄屋建築です。この学問所には、多くの門人とともに画家の円山応挙や俳人の与謝蕪村らが出入りしていたといいますから、教養サロンのようなものだったのかもしれません。2009年には一時マンション建設が持ち上がりましたが、地元の有志や学識経験者の活動によって保存されています。
 遠藤さんは、通常の写真展のようにプリントした写真を壁に飾るオーソドックスな方法での展示はこれまでも行っていません。

すだれに溶け込むようにプリントされた月の写真


 今回も写真を屏風や掛け軸に仕上げたり、アクリル板や木版、さらにはすだれなどにプリントするなど斬新な方法を採用しています。しかも、それらは室内だけでなく日本庭園にも展示し、伝統的な風景を取り込んだ空間インスタレーションとして表現しています。

井戸のふたに花をプリントしたアクリル板をのせる


 作品の中には、昨年9月のニューヨークの個展をきっかけに、米ロサンゼルスの「カウンティ美術館」に収蔵された「宵月」「朝陽」2作品をはじめ、京都の老舗「龍村美術織物」(中京区)が遠藤さんの写真をモチーフに製作した帯も含まれています。

涼しげなすだれには涼しげな写真が似合いますね


 遠藤さんは「建物のよさと作品がコラボして、両者が生き生きとした表情を持つように工夫して展示しました。ぜひ見ていただきたい」と話しています。  (写真はすべて田中幸美)


 6日(日)午後4時~午後5時30分、茶会「写歌茶菓」が開かれます。
有斐斎弘道館は、京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524ー1。写真展は午前10時~午後5時(最終入館午後4時30分、水曜休館)、800円。


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