この写真を見て、ほとんどの人が何も感じなかったり、「地味な一皿…」と思ったりするかもしれません。その一方で、この黒光りするようなソースの色合いを見て「おっ!」と反応する、ジビエが大好きな人たちも少なからずいるはずです。
ジビエというフランス語は、野生の鳥獣類を意味する単語。フランスを中心にヨーロッパでは伝統的に貴族の料理として、狩猟が解禁になる寒い季節に食べられるものです。野生の生き物なので、身が引き締まり、しっかりした歯応えもあり、噛めば噛むほど味わい深いという魅力があります。
色鮮やかで、写真映えするのがフランス料理というイメージがあります。ですが、多くの料理人、特に何十年もフランス料理に携わっているベテランシェフの中には「(地味にみえる)ジビエこそがフランス料理」と考えている人も少なくありません。
そんなシェフの1人が、30年以上の伝統を誇る、日本のグラン・メゾンとして知られる「アピシウス」で15年近く鍛えられ、今は銀座2丁目にある自らのレストラン「カイラダ」で料理する皆良田シェフです。
豊富な経験をもつ皆良田シェフはジビエという食材をこう説明してくれます。「自然に育まれるものだから、季節や場所、それが子どもなのか大人なのか。オスなのかメスなのか、で同じように見える素材の味わいが違ったり…。だからこそ料理人は、個々の素材の特徴を見極める能力や、それを調理する技術が必要になってくる」