すっかり初夏らしくなって、屋外で過ごす一時がとても気持ちのいい季節になりました。そんな初夏の夕暮れ時、文化の香り高い「薪能」などを楽しんでみませんか?
京都市と京都能楽会が主催する毎年恒例の「京都薪能」が6月1、2の両日、京都市左京区の平安神宮特設能舞台で開かれます。夕闇の中で篝火が焚かれ、平安神宮の朱塗りの社殿が映し出される中、舞台には幽玄の世界が浮かび上がります。
69回目となる今年のテーマは、ずばり誰もが知っている悲劇のヒーロー、源義経。普通、能は神に始まり男、女、狂、鬼の順で5番を演じる典型的な上演方式を採りますが、今回の薪能はそうした決まりにこだわらないで、弁慶と牛若丸の出合いを描いた「橋弁慶」など義経にまつわる演目を年代順に並べて上演するという斬新な上演方式を採るそうです。なんだか身近なものに感じられますね。
野外で演じられる薪能は、さまざまな場所で行われますが、ここ平安神宮を舞台に行われる薪能が世界で最も美しいとされます(写真提供・京都能楽会)
19日に記者会見した京都能楽会の井上裕久理事長は、「京都薪能だからこそできる新しい試み。親しみやすい題材なので若い人にも能に触れてほしい」と話していました。
1日は「橋弁慶」に始まり、牛若丸が鏡の里の烏帽子折の家で元服し、夜盗を退治する「烏帽子折」「船弁慶」、2日は鞍馬山に住む大天狗から兵法を授かる「鞍馬天狗」「祇王」「正尊」と続きます。
京都薪能のPRをする「京都能楽会」の井上裕久理事長(右から2人目)ら=京都市左京区の平安神宮
「祇王」は、平清盛の寵愛を受けていた白拍子、祇王が仏御前に心移りをされる悲恋もので、義経は出てきませんが薪能のかがり火の中で女性が舞う美しいシーンを見てほしいと演目に加えたそうです。
また、昨年から狂言方が曲の合間に解説して好評だった「ナビ狂言」を今年も実施。ナビ狂言を担当する狂言師の茂山あきらさんは「京都薪能は日本で一番美しい薪能。新しい能の見方をお伝えしたい」と話していました。
「祇王」 (写真提供・京都能楽会)
5月5日には高島屋京都店1階で午後1時から、20日には京都駅前地下街ポルタで午前11時から、出演者による演目の一部の解説とダイジェスト版の能を披露します。
また、6月1、2の両日、雨天の際の会場となるロームシアター京都(左京区)では両日ともに午後2時から薪能鑑賞のための公開レクチャーを無料で行います。
今回は若者を意識してフライヤーは写真ではなくて、牛若丸と弁慶を描いたイラストを採用したそう。井上理事長は「6月の風物詩としてますます市民や観光客の方々に親しまれるようにしたい」と話していました。
チラシを持ちながら京都薪能のPRをする京都能楽会の井上裕久理事長ら=平安神宮
◆「京都薪能」は、京都市左京区岡崎西天王町97の平安神宮特設能舞台で、午後6時開演(午後5時開場)、午後8時45分終演。
全席自由で、前売り券は4000円、当日券は5000円。チケットは、平安神宮・京都コンサートホールやロームシアター京都、チケットぴあ、ローソンチケットなどで購入できます。
初夏の夜、幽玄の世界へのドアを開いてみませんか?