鮮やかな”フェルメールブルー”の衣装を身にまとう石原さん。このスモックドレスは〈LDK WARE〉によるもの。展覧会会場では〈LDK WARE〉のオリジナルグッズも販売している photo:Yuki Morishima(D-CORD) styling:Keiko Miyazawa(WHITNEY) hair&make-up:Mikako Kikuchi(TRON)

石原さとみインタビュー フェルメール展で音声ガイドに初挑戦! 前編


 上野の森美術館で開催している日本美術史上最大のフェルメール展。東京展の会期も残り1カ月になりました。メトロポリターナが臨時増刊号でお届けした展覧会ナビゲーターの女優・石原さとみさんのインタビューを新春スペシャルとしてWEB初公開します。
台本づくりから参加した、初めての音声ガイド
――石原さんはプライベートでもよく美術館に足を運ばれているとのことで、展示を見る際はいつも音声ガイドを利用されているんですよね。今回、初めてご自身で音声ガイドを担当されてみて、いかがでしたか?
石原 収録中はやっぱり緊張しましたね。初めてのことだったので、事前にさまざまな音声ガイドを聞いて収録に臨みました。最初は、緊張感のある、低く落ち着いた声で録っていたのですが、どうしても硬い印象になってしまって。フェルメールの絵は柔らかい印象のものばかりなので、途中から何か違うかも……と思い、肩の力を抜きながら自分なりの言い方やトーンで声を吹き込んだんです。そうしたら、スタッフの方たちがすごくいいと言ってくださって。そこでようやくテンションをつかめたので、既に半分録っていたものを途中でやめて、最初から全部録り直しました。

――台本づくりから参加されていたそうですが、具体的にどのような関わり方をされていたのでしょうか?
石原 ナレーションを担当したのは、フェルメールの代表作『牛乳を注ぐ女』をはじめとした展示作品12点。台本制作の段階にも参加させていただいて、どの作品を音声ガイドに入れこむかという部分も、一緒に決めさせていただきました。自分がこの絵に対してどう思うか、どういうことを伝えたいか、たくさん意見や感想を言わせていただいて、台本にはそれらを可能な限り反映してまとめていただいています。とくに、ボーナス・トラックでは、自分の言葉で作品やフェルメールへの想いを語らせてもらいました。だから、収録でも一番感情を込めてナレーションができたと思っています。

フェルメールが描く"日常"と"光"
――石原さんにとって、フェルメール作品の魅力は、どんなところにありますか?
石原 フェルメールの絵画は、いろんなことを想像しやすいんですよね。それは、日常のなかにいる「人」にスポットを当てて、さまざまなシーンを描いているからだと思います。描かれている人の表情や目線、ファッションやポーズ、部屋の中の置物など、どこに着目してもいいのですが、絵の中の世界に入って、自分でいろいろとストーリーを想像して楽しめる。「光」の描き方も独特で、光の柔らかさや差し方、影の出し方などは、フェルメールならではの魅力だと思います。オランダの気候は、曇り空が多く晴れの日が少ないので、きっと光が降り注ぐ時間もものすごく短い。そんな状況のなか、フェルメール自身もその光を頼りに描いていたのかな……と想像すると、また味わい深いものがありますよね。フェルメールの作品は、何げない日常のなかにある美しさを伝えてくれているような気がして、そういった日常の切り取られ方がすごく好きです。

――どんな人でも、色々なことを想像しながら見て楽しめそうですね。
石原 宗教画や神話が主流だった17世紀のオランダ絵画のなかで、フェルメールが「日常」を描いているということは、すごく新しい試みだったのだと伺いました。上流階級の人たちだけでなく、一般市民の方々が自宅でも、どこにでも絵画って置いていいんだよ、という意識が広がり、芸術が広く親しまれていくきっかけになった人なのかなと。そんな時代背景があることも含めて、とても素敵な作家だと思います。

――展示される作品の見どころや、特に気になる作品はありますか? 
石原 個人的には『リュートを調弦する女』が、すごく気になっています。また、どのフェルメール作品にも共通する、深く鮮やかな”色”にも注目しています。 ”フェルメールブルー”とも呼ばれる深い青の美しさはもちろん、黄色や赤の色彩も、近くでじっくり見てみたいです。17世紀に描かれた絵の色の美しさがいまだに残っているのは、ものすごく価値のあることなので、写真では伝わらない、直接見て感じられるものが絶対にあると思います。

 

石原さとみ
1986年12月24日 、東京都生まれ。2003年、映画『わたしのグランパ』にて女優デビュー。数々の作品で主演を務めながら、映画やドラマ、舞台など多様なジャンルで幅広く活躍中。

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国内過去最多となる9点のフェルメール作品をはじめ、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンなど、黄金時代と称される17世紀オランダ絵画の見どころが味わえる音声ガイドを、来場者全員に無料でご提供。名画の鑑賞ポイント、カンヴァスに隠されたエピソード、画家たちのトリビアを、石原さとみさんによる心地よいナレーションでお届けします。
 


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