重文「雲龍図」 海北友松筆 建仁寺(京都) 1599(慶長4)年 通期展示

《京都》開館120周年の京都国立博物館が「海北友松」と「国宝」展を来年開催


 来年開館から120周年を迎える京都国立博物館(通称キョーハク)がこのほど、都内で来年の目玉となる特別展覧会「海北友松」(かいほうゆうしょう)と「国宝」展の概要と見どころなどを発表しました。発表会には、キョーハク公式キャラクターの「トラりん」がサプライズで登場。途中から特別展示のナビゲーター役を買って出て、体いっぱいのジェスチャーを交えながら展示の見どころなどを紹介すると会場から拍手と笑いが起こっていました。
 初めにあいさつに立った佐々木丞平館長は、「明治初期には廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、大変急激な文明開化が行われ、伝統文化や文化財の危機を迎えました。そんな中で、伝統文化を守るんだという〝守りのとりで〟としてこの美術館が創立されました」と京都国立博物館の成立の歴史を紹介。「それから120年。現実に起こるさまざまな自然災害に対して文化財を守る〝防災のシステム〟をきちんと構築し、そのための指導的な役割を担っていきたい」と意気込みを語りました。

京都国立博物館の公式キャラクター「トラりん」  (写真・田中幸美)


ジェスチャーを交えながら展示の見どころなどを紹介する京都国立博物館公式キャラクターのトラりん  (写真・田中幸美)



発表会の冒頭、あいさつをする京都国立博物館の佐々木丞平館長  (写真・田中幸美)


 特別展覧会「海北友松」は来年4月11日から5月21日まで、「国宝」展は10月3日から11月26日まで開催します。
 海北友松は、狩野派の総帥である狩野永徳や、永徳のライバルだった長谷川等伯らがしのぎを削った桃山時代、武門の出身でありながら期せずして絵師となり、彼らに勝るとも劣らない実力を発揮して独自の画境を開いた謎多き人物です。
 「海北友松」展は昭和14年から平成9年までの間、京都市美術館などで計4回開催されました。今回の見どころを解説した京都国立博物館の山本英男学芸部長は「それらをしのぐ規模と最高の質を供えた友松の『大回顧展覧会』といって差し支えないと思います」と話しました。また今回の海北友松展は、「狩野永徳展」や「長谷川等伯展」などキョーハクが手がけてきた一連の桃山絵師シリーズの最後を飾る展覧会となります。展示総数約70件の大半が障壁画と屏風などの大きな作品です。

 友松作品に国宝はありませんが、今回は大徳寺聚光院の永徳筆による国宝障壁画「花鳥図襖」など2点を展示します。さらに重文に指定されている友松の作品を一挙公開する予定で、代表作をすべて網羅する形になります。山本さんは「絵画にとどまらず、直筆の書状や関連文書などを展示することで友松の人生を多角的に捉えるのがねらい」と話していました。
 絵師として頭角を現し始めた60代のころ、活躍の場となったのが京都・祇園に近い建仁寺です。寺には大方丈をはじめ、塔頭(たっちゅう・寺院の境内にある小さな坊)に多くの障壁画や屏風絵を描きました。そうしたことから建仁寺は別名「友松寺」とも呼ばれます。
 その中の1つ「松に叭々鳥図襖」(まつにははちょうずふすま)について、山本さんは「枝が伸びる様子がすさまじい気迫を込めた筆遣いに込められていて、スケール感も十分。永徳ゆずりであることがわかります」とする一方、「余白を多用してしっとりとした情趣を生み出しているところが友松の個性」と評します。

重文「松に叭々鳥図襖」 海北友松筆 禅居庵(京都) 1597(慶長2)年 後期展示(5月2日~21日)


 また、友松は、龍が得意でよく画題に採用していました。代表作は建仁寺の重文「雲龍図」や北野天満宮の重文「雲龍図屏風」などです。友松の龍画の評判は海を渡り、隣国朝鮮でも非常に高い評価を受けたことが伺える書状なども見つかっています。
 さらに1958(昭和33)年にアメリカの美術館が所蔵して以来、一度も日本に戻ることがなかった幻の最高傑作「月下渓流図屏風」が約60年ぶりに里帰りをします。最晩年にして友松がたどり着いた画境の到達点となる作品を初公開します。

重文「雲龍図屏風」(右隻) 海北友松筆 北野天満宮(京都) 桃山時代17世紀 通期展示


「月下渓流図屏風」 海北友松筆 ネルソン・アトキンズ美術館(アメリカ) 桃山時代17世紀 通期展示


 かたや秋の国宝展は、来年が国宝制度のスタートとなる「古社寺保存法」(現在の「文化財保護法」の前身の法律)の制定から120年となることから41年ぶりに開催します。
 降矢哲男学芸部研究員によると、「縄文のビーナス」「縄文の女神」と呼ばれる土偶3点をはじめ、教科書で一度は目にしたことのある「金印」、平安時代に栄華を極めた平清盛一門が極楽浄土を夢見て厳島神社に奉納した「平家納経」、さらには雪舟の「四季山水図巻」など「文化財のスーパースター」ばかり約200件を紹介します。現在、建造物を除いた絵画や彫刻などの美術工芸品の国宝は878件あるので、そのうちの約4分の1が集結することになります。
 また、等伯展でも実現しなかった等伯筆の「松林図屏風」と息子の久蔵筆による「桜図壁貼付」(さくらずかべはりつけ)の〝親子共演〟も実現するので非常に楽しみですね。

国宝「松林図屏風」 長谷川等伯筆 東京国立博物館


国宝「桜図壁貼付」 長谷川久蔵筆 京都・智積院


 来年のことを言うと鬼が笑うとはいいますが、今から楽しみな特別展示です。とくに開催期間中は、桜と紅葉の時期にもあたり、ぜひ京都と京都国立博物館に足を運びたいものですね。



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