日本でも人気のイギリスのファッションデザイナー、ポール・スミスの魅力と世界観を紹介する展覧会「ポール・スミス展 HELLO,MY NAME IS PAUL SMITH」が東京・上野の上野の森美術館で開かれています。
ポールが24歳のときイングランド中心部のノッティンガムにオープンしたたった3メートル四方の第1号店のショップをはじめ、現在使っているオフィスやデザインルームを再現した展示のほか、ポール自身の頭の中にあるアイデアを表現した映像インスタレーションなど約2800点に及ぶ膨大な展示を、ファッションだけでなくアート的な視点で楽しむことができます。
たった3メートル四方の第1号店のショップ
ポールの頭の中を表現した映像インスタレーション
展示は、ポール自らプロデュース。会場を入るとまず目に飛び込んでくるのは壁一面に配置された写真や絵画などのアートコレクションです。アンディ・ウォーホルやデビット・ホックニーやバンクシーなど有名アーティストの作品もあれば、11歳から撮り続けているというポール自身が撮影した写真、友人や家族、ファンから贈られたものなどが通路の壁の両側にびっしりと掲出されています。ロンドンのオフィスに飾られているものと地下に保管されているものの中から選び抜かれた珠玉の500点だそうです。
両側の壁面には写真や絵画などのアートコレクションがびっしりと張られています
注目すべきは、ロンドン・コヴェントガーデンにあるオフィスを再現したコーナーです。机の上だけでなく椅子の上にも物が積み重なり座る隙間さえありません。片隅に置かれた開いたスーツケースの中には、鉄道模型が見えます。これは、日本での会議で重苦しい空気が漂ったときに突然広げ、会議を再び活性化するための小道具だそう。サプライズ好きでおちゃめなポールらしいエピソードですね。また、ハンガーに掛けられたスパゲティのプリントシャツは日本の食品サンプルを参考にして作ったものです。同じくコヴェントガーデンにあるデザインスタジオを再現したものも、ポールのデザインと服作りを理解する上で興味深い展示です。プリント柄の中でも最も人気のあるストライプ柄はすべてここで生み出されます。
会議の重苦しい空気を打ち破るためポールが考えたスーツケースの中の鉄道模型。傍らには食品サンプルを参考に作ったスパゲティのプリントのシャツが
ファッションブランド「ポール・スミス」は、カメラ、オートバイ、自転車などさまざまなコラボレーションにチャレンジしてきましたが、初期の代表作がローバー社(2005年消滅、ミニはBMWが保有)のミニです。2015年秋冬コレクションで発表された「Pale Tone」と呼ばれる淡くて優しいストライプ柄を装飾した車の現物が展示されています。
コラボレーションの初期の代表作、ローバー社)のミニ
ライカとコラボレーションしたおしゃれなカメラ
さらに、ポールにとって初めてのショールームとなったパリのホテルのベッドルームも再現。当時のコレクションは、ニット2着、シャツ6枚、ジャケット2着のわずか10着をベッドの上に広げただけでした。最終日の終わりころにやってきた男性客がシャツをオーダーしたのが始まりだそうです。
今回、展示物はすべてカメラやスマートフォンなどカメラ機能付き携帯電話での撮影が可能です。また、展覧会のテーマカラーでもあるピンクの部屋に設置した撮影スポットで撮影した写真に「#HelloPaulSmith」とハッシュタグをつけてインスタグラムやツイッターで投稿すると、その写真をオリジナルのフォトカードにプリントするサービスも行っています。
会場では音声ガイドサービスを実施しており、手持ちのスマホでQRコードを読み取ると展示を紹介する音声ガイドを聞くことができます。音声ガイドのオリジナルのピンクのイヤホンは持ち帰ることができるなど、来館者にはうれしい仕掛けが盛りだくさんです。
ポール・スミス展は、東京に先立ち京都国立近代美術館でも開催され、約7万人が来館する大盛況となりました。9月11日からは、名古屋・松坂屋美術館でも開催されます。
この夏、ポールのインスピレーションに満ちたファッションとアートの世界に触れてみてはいかがでしょうか。
初めてのショールームとなったパリのホテルのベッドルームも再現されました
◆「ポール・スミス展」は、東京都台東区上野公園1−2の「上野の森美術館」で8月23日まで。午前11時~午後6時(金曜日は午後8時)。
詳細は公式ホームページhttp://paulsmith2016.jp/で。