illustration: Shogo Sekine

#リアル絶メシを救え!《東京#CODE》


 最近、また歌舞伎熱が再燃しております。緊急事態宣言下も舞台を続けてくれることのありがたさ。そして、素晴らしい舞台にシビれたあとには友人とお茶に行くのがお決まりです。ある日のこと。昼公演が終わり、「あんみつでも食べて帰ろう」と、観劇仲間と銀座7丁目の「立田野」を目指して歩き出しました。友人「あれ?」、私「あれれ?この辺だったよね」。はて、長年通っていた店を見失うとは。念のためGoogleMapを見ても、あるべき場所にその店がない。検索すると、なんと「立田野」は数年前に閉店したとあります。「ぎゃー‼」。二人で叫んでしまいました。気を取り直して5丁目に行けば、あの「鹿乃子」もない(2020年夏に閉店したらしい)。ダブルショックでフラフラと通りの向こうの「若松」に行けば、ここは緊急事態宣言下で臨時休業(4月現在は営業中)。私たちはクラシックに「銀座であんみつ」を食べたかっただけなのに…。とくに昨年来のことは、すべてコロナのせいなのでしょうか?当たり前、と思っていたことができなくなるとは。この甘味の異常事態に目が眩んでしまったのです。

 皆さんもこんな経験はないですか?"コロナ禍でしばらく訪れていなかった馴染みの店が閉店になっていた"ショック。確かに行けていなかった、だけどずっとあると思っていた。老舗の味は変わらずそこにあると思っていたのに…。お店がなくなることは、その味が消えてしまうということだけではありません。その店での会話、甘い思い出、苦い思い出。すべてが消え去ってしまうこと。神保町の「スヰートポーヅ」に、「レバンテ」や「東京美々卯」など。資金難、顧客&店主の高齢化、後継者不足、ビルの老朽化など、その理由はいろいろだろうと思いますが、でもやっぱりさみしい。さみしいというか、身を切られるようなつらさです。

 ちょっと前に博報堂ケトルが運営する「絶メシ」という企画がありました。各地にある絶品の町グルメを紹介するというもの。ドラマ化もされましたね。絶滅の危機にあると認定された、町の小さなお店のグルメを紹介するシリーズです。この企画で危ぶまれていた絶滅が、現実のものとなりつつあるのです。

 飲食店だけではなく、原宿では名物ショップが消えています。先日は海外セレブからも絶大な支持を受けていた「ファリーントーキョー」が閉店。気づけば竹下通りもシャッター商店街になってしまいました。渋谷だってそうです。数年前には、駅近くの桜丘町にあった立ち飲み居酒屋の「富士屋本店」も再開発の波に飲まれて閉店してしまいました(※)。

 開発と閉店の波が去ったあとに残っているのは、グローバルブランドやチェーン系のお店ばかり。街の個性や匂いがなくなって、どこにでもある平凡な街になっていってしまうのでしょうか?コロナが落ち着いてインバウンドが戻ってきたときに、海外の旅行客にとっても魅力が半減してしまっては元も子もありません。クラウドファンディングなどで店を救う流れもありますが、ここはぜひとも、「味の文化遺産」として老舗の味を残すことを行政の力でなんとかしてほしいところです。いい店の吸引力は替えが利きません。失って初めてその価値に気づく、そうならないためにも、なんとかならないかなあ…。誰か…。

※その後、ワインやイタリアンが楽しめる酒場として桜丘町で再始動した

THIS MONTH'S CODE

#立田野

明治28年に創業し、120年を超える歴史がある甘味の老舗「銀座立田野」。ここのあんみつは、あんみつ界のレジェンドです。

#神保町の「スヰートポーヅ」に、「レバンテ」や「東京美々卯」など

ほかにも早稲田の「西北亭」、神保町の「天丼いもや」「とんかついもや」、恵比寿の「キッチン・ボン」などの名店が、ここ数年で閉店。悲しい(涙)。

#絶メシ

各地の絶滅してしまうかもしれない絶品グルメを紹介する企画。書籍も刊行。テレビ東京で『絶メシロード』としてドラマ化も。






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