illustration: Shogo Sekine

#80年代ラブ 女の子っぽさの逆襲《東京#CODE》


  最近、お洒落な店で突然80年代の歌謡曲が流れてきたりすることが増えました。お気に入りの原宿GYREのカフェでも、かかっていたのは松田聖子と早見優。えっと、いま2021年ですよね(笑)。DJは明らかに20代。彼のレコードケースは80年代の歌謡曲アルバムでいっぱい。私自身は高校生からどっぷり80年代リアル世代なんで、涙が出るほど懐かしいのですが、いまの20代が80年代に憧れる感じはうれしさ半分、不思議さ半分です。

 「なんで松田聖子なの?」と、その20代男子DJに聞くと「この頃の曲って、レコード盤だといまの配信の音の何倍も音が厚くていいじゃないですか。それに歌詞が最高ですよ」と、リアルにその時代を生きてきた私たちよりも勉強していて、うんちくもすごいのです。当時の映像も掘りまくっているとか。彼らにとってはいまの音楽も過去の音楽も、時間の流れに関係なく存在しています。年代も関係なく、単純にいいものはいい、なんですよね。

 ファッションでも同じことが起きています。いまは空前の古着ブームですが、古着のなかでも最近は80年代系が売れています。パフスリーブや大きなつけ襟、パステルカラーや白ブーツやロングブーツ、ミニスカートも80年代の気分。そして、ついに「マツコの知らない世界」でも“80年代アイドル衣装の世界”という特集で、当時のWinkや南野陽子、工藤静香、中森明菜にハマったファッションをしている女子たちが登場しました。そのなかで、マリーちゃんという子が話していた言葉が面白かったのです(以下、一部抜枠)。「いまのファッションってジェンダーレスで、色使いもアースカラーとかベージュぽくて」。なるほどですなあ。80年代アイドルの服はブリブリ、キラキラしていてお姫様みたい。確かに、私もクリスチャン・ラクロワに憧れて赤いジャケットとか持っていたなあ(遠い目)。それもこれも、80年代後半からはバブルだったから。「ずっと不景気な日本しか見ていないので、いまにはない80年代の景気よさに憧れるんです。みんなアホ、みたいな(笑)」byマリー。いやぁ、そうです、確かにアホでした(汗)。でも、アホだったからこそ好きな服を全開で着ていたし、みんな個性的で輝いていた。小泉今日子の衣装でマッチョドレスに脳味噌ハットとか、もう、レディー・ガガ超えだし!

 2020年代のいまの同調圧力時代の子たちから見れば、80年代は音楽もファッションも振り切れていて非現実的。だから、憧れるんだと思うわけです。

 そう思いながら、2021年春夏コレクションを見れば、そんな可愛さモチーフの嵐です。ドルガバもミュウミュウもフリルやパステルカラー全開!“ロマンティック”はトレンドキーワードです。まだトンネルの先が見えないコロナ禍にあって、もう地味な服を着ているなんて意味がないんです。同調圧力なんて吹っ飛ばせばいい。自分の好きなファッションを自分らしく着ること。ある意味「アホ」になり切れちゃう人のほうが幸せなんじゃないかなって。明日がどうなるかわからない時代だからこそ、自分らしく生きるほうが勝ち。だからこそ、いまの女の子っぽさの逆襲もわかる!年齢、性別に関係なく、好きな服を好きに着ること。これが風の時代、2021年の生きる道じゃないかなあ。


THIS MONTH'S CODE

#レコード盤

渋谷のMIYASHITA PARKにも「FACE RECORDS」がオープン。70、80年代の歌謡曲レコードが人気で、最近ではレコードを再生するプレイヤーも売れているとか。

#マリーちゃん

80年代のアイドルのファッションを着こなして、歌ったり、踊っている女の子。インスタのアカウントは@sugar.baby.marie

#風の時代

昨年の12月22日から西洋占星術では「土の時代」から「風の時代」に変わったと言われています。物質的な所有の時代から、目に見えない情報や個人の時代へと移行するとされています。






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