どうもこのところ一日が早過ぎる。朝起きて、Zoomして、ハッと気づけば夕方。また夕ご飯の献立に悩んでいる。遠い昔、小学生だった頃。あれだけ長かった一日がいまではあっという間なのは、やはり歳を取ったからなのでしょうか? それとも地球の回転が速くなったのかな?
ある日のこと。いつものようにアシちゃんと話しておりました。「最近私の友人は動画を倍速再生して見ているんです」。ふむ。私「それってYouTubeってこと?」。アシ「いえ、TVerもNetflixもですね。大体1.5倍くらいで見るのがデフォルトですね」。ほう。先日『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が公開されましたが、ストーリーをおさらいするためにも、みんな過去作品を倍速再生で見ていたと。確かにAbema TVには倍速ニュースもあります。私もYouTubeを倍速にしてみるクセがつきました。でも映画やドラマはちゃんとストーリーや台詞を味わいたい。倍速だと悲劇も喜劇にならないかと思うけど、Z世代にとって、時間の効率化のほうが文脈や情緒より勝るみたい。
最近のTikTokを見ていても1本あたり10秒前後が普通です。縦スクロールで面白い投稿を流し見していくには10秒が限界。は、速い。最近はレシピ動画もYouTubeよりTikTokで見るのが普通なのだとか。倍速で撮影して、瞬時にできちゃう動画がバズりまくっているんです。
いわゆる”尺”という感覚が2020年代に入って急速に短くなったように思います。ひとつには若い世代ほどすぐ飽きやすい、という面があります。また、文脈よりも結論重視という風潮もあるように思います。物語で大切なのは起承転結ですが、もはや”起”と”結”、いや”結”だけでいいのかも、という流れ。お笑いでもじわじわ笑わせる伝統の漫才よりも、マヂカルラブリーみたいに初めから終わりまで動きだけで笑えるものがウケる。音楽も前奏なしで始まる曲も増えていたりとかね。
忙しいわけでもないのに、スマホのなかは見るべきコンテンツにあふれています。インスタ、ツイッター、TikTok、YouTubeにNetflix、ゲームに漫画アプリ。昭和のテレビと紙媒体だけが情報源だった時代とはさま変わり。とにかくコンテンツ過多の時代を私たちは生きています。ただ、求められるのはそのコンテンツの中身の重厚さよりも、時間と共感を埋めてくれること。意味のないTikTokのダンスも、誰かとノリを共有できればそれでいい。コロナ禍のおうち時間と将来への不安を埋めてくれる、”速くて軽いもの”がウケる時代。次から次へと流れていくコンテンツ。だからこの世代はテレビもほとんど見ません。倍速再生も早送りもできず、CMで分断されるテレビは不便、と彼らは言うのです。とくに最近のバラエティはCMまたぎで結論を引っぱったり、この倍速世代にとっては見にくいのだとか。なるほどね。
そんなに生き急いでどうするの?と思うけど、彼らの体感スピードが、どうも私は地球の回転を早めているように思えてならないのです。まあ、一方で昭和的なアナログへの憧れも強い世代だったりもします。どのタイムラインを選ぶかは自分次第。アナログの文脈や行間や情緒が好きな私としては、両方の速度のよさをうまく取り入れたハイブリッドタイムで生きたいな、などと思うのでした。
THIS MONTH'S CODE
#倍速再生
YouTubeもTVerもNetflixも再生速度が選べる。すぐれた倍速機能を搭載したテレビも各メーカーからリリースされている。
#マヂカルラブリー
2020年M-1グランプリの王者。激しい動きで終始笑いを取りに行くスタイルが「これは漫才なのか?」と物議を醸した。
#前奏なしで始まる曲
米津玄師「Lemon」、King Gnu「白日」、Ado「うっせぇわ」など、ここ数年のヒット曲はイントロなしに始まる曲が多い。