illustration: Shogo Sekine

#愛と幸せの推し消費《東京#CODE》


 池袋サンシャインシティで開催された「うたプリ」こと「うたの☆プリンスさまっ♪」の10周年イベントにはたくさんの来場者が集まっていました。予約チケットで整然と会場に集まる人々のお目当ては、デザイナー・丸山敬太さんが手がけるライブ衣装や、映像などの展示、そしてオリジナルグッズです。客層も10代から50代まで幅広く、音楽育成系アプリゲームのなかでも不動の人気を感じさせます。

 『推し、燃ゆ』(宇佐見りん著)が先日芥川賞を受賞し、7月からはドラマ「推しの王子様」がスタートするなど、“推し”という言葉もすっかり定着しました。この言葉自体が広まったのは約10年前。A‌K‌Bヲタの方たちが自分のお目当ての子を応援することを称したのがきっかけのようです。ファンと推し。似ているようでちょっとニュアンスが違うのは、“ファン”が好きという感情ベースなのに対して、“推し”は好きな対象を応援する、という行動ベースなこと。

 最近の例だとNiziUとかPRODUCE 101とかがまさに推し現象から生まれたプロジェクト。そして、推しの対象もジャニーズやA‌K‌Bなどのアイドルから、韓流、ユーチューバー、声優、アニメ&ゲームキャラなど、その幅は人間を超えて二次元まで広がっているのです。

 この応援ブームが、いまファッション業界や飲食業界の現場にも大きく影響を与えております。気がつけば、原宿はもはやアニメコラボショップやカフェの街と化しているし、渋谷マルイなんてアニメの殿堂ですから隔世の感です。ファッションブランドがどんどんリアル店舗を閉鎖する一方で、二次元ものがリアル店舗をオープンするという流れも止まりません。

 “推し消費”とはまさに、こういった“推し活”のためにお金を費やすこと。Z世代の中学生男子と話していると、おいしいものも服もいらない。だけど、ゲームのオフィシャルパーカーは欲しいのだとか。ビームスが日本eスポーツ連合の代表選手にユニフォームを提供したり、ファッションブランドもどんどんゲーム業界とコラボしています。“推し”にお金を使うことは、そのキャラを応援したり、同じ“推し”を愛するもの同士の共感をつくります。応援+共感=幸福。ここがポイントです。

 かつてなにかにハマったことって誰しもあったと思うのです。いまはその対象が二次元、バーチャル空間にも広がっているというだけ。対象は人間じゃなくてもいいのです。推しに何百万円とぶっ込む太客もいますが、大切なのは幸せかどうか、です。ちょっと昔のヒモや愛人はすねたり、わがまま言ったり、なにかと面倒ですが、“推し”は人を傷つけません。人を好きになるよりずっと楽で平和なのですから、“推し活”はやめられない。そして前出のうたプリのように、その関係に終わりもありません(ほかの推しが現れるまで)。最近は、ポコチャみたいに投げ銭できるアプリもあるからね。有名じゃない、自分だけの“推し”にお金を使うこともできちゃうしね。

 “推し消費”とはそんな優しいお金の使い方なのです。ちなみに私の最近の“推し”はユーチューバーのブリアナ・ギガンテさん。オフィシャルグッズがほしい(笑)。“推し”がいる生活って本当に幸せ♡。さてさて、あなたの“推し”は誰ですか?

THIS MONTH'S CODE

#うたの☆プリンスさまっ♪

2010年に第一作となるゲームをリリース。以降、CDやアニメなど、さまざまなメディア展開をしている女性向けコンテンツ。アイドルを目指す男の子たちを中心に、個性豊かなキャラクターが物語を繰り広げる。

#PRODUCE 101

韓国発のサバイバル形式の公開オーディション番組。日本版の「PRODUCE 101 JAPAN」シーズン2は6月に最終回を迎えた。

#ビームスが日本eスポーツ連合の代表選手にユニフォームを提供

そのほか、昨年はアジアでもトップレベルのeスポーツ国際大会「RAGE ASIA 2020」のオフィシャルTシャツのデザインも手がけた。






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