illustration: Shogo Sekine

バーチャル充なの? #メタバース時代《東京#CODE》


 先日、第33回マイナビTGCで世界初のアバターとリアルのコラボステージが披露されました。「ポケコロ」という着せ替えアプリで《ケイタマルヤマ》と《アナ スイ》によるコラボファッションを発表したのですが、そのアイテムを着たアバターが、リアルなランウェイをモデルと一緒に歩くというショーでした。AR技術を駆使した無観客配信だからこそできる見せ方ですが、ますますバーチャル世界とリアル世界の境界線が薄れていっています。

 この夏大ヒットした映画『竜とそばかすの姫』のなかで登場した「U」と呼ばれる仮想世界もそうですが、こういったバーチャル上でコミュニケーションをとる世界をメタバースと表現しています。メタバースとはmeta(超越した)とuniverse(宇宙)を融合させた造語で、ざっくりいうと、多人数が同時に参加可能で、自由に行動できる、ネットワーク上に作成された仮想空間のこと。ゲームをする人には、オンラインでバトルする『フォートナイト』がいちばんわかりやすい例です。そのゲームアプリ内で昨年ラッパーのトラヴィス・スコットがバーチャルコンサートを行って、それを1230万人が視聴するなど、ゲームを超えた世界的コミュニティになっています。

 こうしてゲームを中心に広まっているメタバースですが、ここにきて一気に話題になっているのが「Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOが、メタバースに経営資源を投入していくことを表明した」というニュース。コロナ禍によって私たちはZoomで話すことが日常になりました。帰省もできず、リアルに会えなくても、デジタルツールを使ってつながれることを体験したのです。

 今年流行ったClubhouseの次に話題になっているバーチャルライブ配信アプリ、REALITYでは自分のアバターを作成して、VTuberみたいにほかのユーザーとコミュニケーションがとれます。簡単に匿名アバターがつくれて、配信をしたり、誰かとつながれる時代。いろんなゲームで、人格を使い分けるように複数のアバターを楽しむ。ゲーム内のみで使えるクローズドタイプに加えて、Facebookが目指そうとしているオープンなプラットフォームなど、メタバースの可能性はますます広がっていきます。

 先日、10代前半の子と話していたときに、「アバターだと意外と本音が話せるんだよね。顔も見えないし、肩書きも年齢もないから」と言っていたのが印象的でした。もちろん、VTuberで有名になっても現実世界では誰にもわからないので、「バーチャルで有名になっても意味ないんじゃない?」と聞くと、「え、顔バレするほうがヤバくないですか?」と返されたのです。リアルな顔や本名がわかったら、誹謗中傷を受けたときに逃げ場がなくなってしまう。だけど最初から架空の存在であれば、アバターを消滅してしまえばそれで解決する。だからこそ、リアルよりバーチャルのほうが安心するんですよ、と。なるほどねぇ。リア充よりもメタバースで充実する”バーチャル充”のほうが生きやすい時代なのかもしれませんね。VRヘッドセットがあれば、より現実とリアルの境界は曖昧です。時代の流れの速さについていけるか、おばさんは本当に心配です…。

 

THIS MONTH'S CODE

#第33回マイナビTGC

9月4日に開催された『第33回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2021 AUTUMN/WINTER』。今回のテーマは「アタラシイTGC」。LINE LIVEでオンライン配信を行い、新しいバーチャルな試みが詰まった内容に。

#メタバース

SF作家のニール・スティーヴンスンが『スノウ・クラッシュ』(1992年)という小説のなかで用いた言葉に由来する。

#REALITY

顔出しなしで配信できるアプリ。ガチャを引いていろんな衣装を楽しめるのがポイント。






この記事をシェアする

LATEST POSTS