illustration: Shogo Sekine

#物々交換《東京#CODE》


 季節は秋から冬へ。週末の東京にすっかり人出が戻ってきましたね。先日行った京都もコロナ前の混雑が戻ってきていて、もはや、あの人が少なかった観光地が懐かしい今日この頃。

 そんな秋の週末、あちこちの公園や大学ではイベントがリアル開催されていて、うれしくなります。個性的なマーケットもいくつか開催されていました。北青山にあるワールドのビル1階で開催されたのは、RAGTAG×246st.MARKETのコラボで生まれたポップアップショップ。こちらは「RAGTAG」の膨大な古着ストックからデザイナーや編集者、スタイリストなどがセレクトした服を売る、というもの。90年代のギャルソンとか、エディ・スリマン時代のサンローラン、ディオール オムなどなど。ファッショニスタ垂涎の品揃え。それらはむしろ安くはなく、コレクションとして価値あるものがそれなりに高い値段で並んでいました。

 また同じ頃、新宿御苑では「GTFグリーンチャレンジデー」というイベントが開催されていました。環境省も共催として参加するこのイベントは、「地球環境や生物多様性を意識するためのチャレンジを応援する日」として開催され、サステナブルな取り組みをしている企業や自治体、学校がブースやマルシェを出店していたのです。久しぶりに行く新宿御苑は、都内でもとくに空が広く感じられ、黄色に染まった木々に囲まれて開放感が最高です。まるでNYのセントラルパークやロンドンのハイドパークにいるみたい。そんな場所で開催されたこのイベントで、ひときわ目を引く場所がありました。それが「0円 服の交換会」です。つまり不要な服を1枚持っていけば、ほかの誰かが持ってきた服と物々交換できるという仕組み。バザーやフリマの感覚にも近くて、物と物を交換する、というシンプルなやりとりが楽しい。ちょうど私自身、「サマリーポケット」を使って衣替えのタイミングだったので、着なくなった服を選んで会場に持っていきました。参加方法はいたって簡単。服を自分でハンガーにかけて、会場で欲しい服を見つける、というもの。自分が置いた服をすぐに誰かが手に取ってくれて、「ああ、お嫁に行くのね」と見送るのもよき。

 「メルカリ」もそうですが、こうやって服を回すって大事だなと思います。フリマから物々交換へ。大切な服を、人から人へと循環させること。または古着をしっかり回収して、使われないものはきちんと素材へと戻して、再生して循環させるという「サーキュラーエコノミー」に、時代は向かっていることを実感します。

以前行ったオーストラリアのメルボルンにあるフィッツロイという人気のエリアは、古着屋さんだらけでした。そこで「最近、アデレードあたりでは物々交換が当たり前なんですよ」と聞いたことを思い出しました。個人経営のワイン農家さんと隣の畑の人が、ワインと野菜を交換したり。手づくりの家具と古い道具を交換したりしているのだとか。アデレードはオーストラリアでも最も環境にやさしい都市と言われていて、こういったサステナブルな文化に先進的な街です。

 そういえば、ゲームの“あつ森”でも基本、物々交換でいろんなものをゲットしますよね。デジタル貨幣が流通する現代に、こういう原点回帰現象が起きているのは興味深い。時代がめぐり、より人と人のつながりが大事になった、ということかもしれませんね。

THIS MONTH'S CODE

#RAGTAG×246st.MARKET

246st.MARKETは、ワールドが運営するクリエイターとユーザーをつなぐポップアップ型イベント。今回はRAGTAGとのコラボレーションでファッションマーケットを開催した。

#サマリーポケット

着ない服や家にあふれている荷物を、箱に詰めて預けられるサービス。預けた荷物を、スマホで確認・管理できて便利。ファッション関係者も数多く利用している。

#アデレード

南オーストラリア州の州都。2021年「世界で最も住みやすい都市」3位に選ばれる。自治体が管轄する地区の電力は、2020年7月1日から100%再生可能エネルギーにより賄われていると言われている。






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