illustration: Shogo Sekine

#動く東京 変わらない東京《東京#CODE》


 日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅を降りると、そこは一気に別世界。先日「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」がオープンしました。 まず目に入ってくるのが吹き抜けになった空間のエレベーター。そのスケールの大きさにびっくりします。駅前広場から直結する動線で、地下2階にあるレストランフロア「T-MARKET」へ。こちらはレストランや物販が27店舗(店舗によっては11月下旬以降にオープン予定)入るおしゃれ横丁のようなフロア。新業態として初出店の話題の店もあって、わいわいとにぎやかな店に、地下鉄の改札から1分で行けるという画期的なフロアです。上階と結ぶエレベーターからは、地下鉄のプラットフォームが見え、 ワクワクします。まるでNYのグランド・セントラル・ターミナルみたい。そして一気に45階へ上がると、そこには「TOKYO NODE」が出現しました。イベントホールから、ギャラリー、レストラン、最上階にはインフィニティープールまで!情報発信基地&新たな東京の絶景ポイントが誕生しました。

 また11月24日には「麻布台ヒルズ」もオープンします。日本一となる約330mの超高層ビルが立ち、中心にどーんと目に入るのが、ヘザウィック・スタジオによる、うねるような外観の「麻布台ヒルズ アリーナ」。圧巻です。

 ここ数年、東京の真ん中では、開発が加速度的に進んでいます。再開発の波は止まることを知りません。2024年オープンの施設も目白押し。気がつけば、馴染みのエリアが更地になり、 あっという間に様変わりして、 初めて見る景色に変貌していっています。

 一方で、その開発に「待った」をかける動きもあります。神宮外苑地区の再開発では、樹木の伐採中止を求める市民グループの運動も広がり、9月に都の要請を受けて計画見直しとなり、伐採延期に至りました。この樹木伐採に反対する市民運動は神宮外苑だけでなく、渋谷区などでも起きています。

 東京が新しく変わっていくこと自体は時代の流れだとしても、変わっていく風景の中に、残したいもの、守りたいものがあります。

 先日、新橋の古いビルの上階にあるお店に伺いました。新橋の雑多な空気感の中、カウンターで供される中華、店主との会話も楽しいお店です。そんな新橋駅の東側では新橋駅前ビル1、2号館を含む一帯の再開発が検討されている、というニュースを見ました。あの太麺のナポリタンで有名な「ポンヌフ」や立ち飲み居酒屋をはじめ、サラリーマンの聖地と呼べる店が多く、魔窟のような店も魅力の場所です。建物の老朽化には整備が必要ではあるけど、新橋からあの雰囲気を取り除いてしまうことには寂しさがあります。少なくとも、あの雑踏、ざわめき、新橋らしさがどう守られていくのか、それをしっかり見届けていきたいと思います。

 ビルはどんどん高くなるけど、足元の私たちにとって、街が平板化してしまっては意味がありません。住んでいる私たちにとっても、海外から来る人にとっても、変わった東京が魅力的であるために私たちは何を後世に残すべきか?先日案内したチェコ人の友人がいちばん喜んだのは、新宿の思い出横丁でした。もうもうと煙が登る中で笑いながら飲んだビールの味。あの“気”こそ、日本の宝。そう思うこのごろなのです。

THIS MONTH'S CODE

#「虎ノ門ヒルズステーションタワー」

設計を手がけたのは、建築家の重松象平氏(OMA)。12月には「ホテル虎ノ門ヒルズ」もオープン予定。

#TOKYO NODE

12月には「蜷川実花展:Eternity in a Moment」を開催予定。圧倒的なスケールをもつ空間体験型の展示になるという。

#伐採延期

三井不動産は、樹木の伐採開始が2024年1月以降に延期される見通しを明らかにした。






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