子供は日常生活の中にあふれる言葉をリズムや音、響きとして吸収します。そして、遊びや生活の場面で、使ったり言い合ったりしながら、言葉の世界を広げていきます。
わが家の息子が保育園の頃、突然「え~ぃ、ずがたかい、ひかえおろう、この紋所が目に入らぬか」「お主も悪よのぉ。ぬはははは」などと言い出したときには、驚くやら、おかしいやら。おじいちゃんと一緒にテレビの時代劇を見るのが大好きな友達のシゲ君の影響で、息子はこれまで見たことのなかったテレビの時代劇に見入りました。
勧善懲悪のストーリーの痛快さとともに、耳から入って来る侍や江戸言葉を面白がりました。それは、彼にとって小気味よい音の響きやリズムだったようです。
ちょうどその頃、楽しんだ絵本に『ねぎぼうずのあさたろう』(飯野和好・作、福音館書店)=(その3・人情渡し舟)=があります。
平成11年から、全10冊刊行されたこのシリーズは、浪曲調の語り口と迫力ある場面描写の痛快時代劇絵本です。
〽回し合羽(がっぱ)に三度笠(さんどがさ)、正義の味方あさたろう、筋の通らぬ悪党をだまって見過ごすわけにはいかぬ、ねぎじるぴゅるるとふりかけて、娘と父の絆をむすぶ、浮世の人の情けに触れて、今日も旅する東海道
中表紙に書かれている「二代 広沢虎造風浪曲節(ひろさわとらぞうふうろうきょくぶし)ってなぁに?」と聞かれ、図書館で浪曲のCDを借りてきて一緒に聴いてみました。その独特の節回しやしわがれ声を息子は不思議がりながらも、体を揺らし、そのうち体をねじるような動きを見せました。子供たちは全身で言葉を聴き、味わっていることがわかりました。
読み手の私も、知らず知らず、日本の風土や文化の中で体の中にため込まれてきた言葉のリズムや音の響きを楽しみながら読みました。
幼いときからさまざまなジャンルの絵本を通して、日本語の面白さや不思議さに出合い、味わってほしいものです。
〽ちょう~ど、じかん~と~なりま~した~
(国立音楽大教授 林浩子)