野や山に出かけたくなるこの季節、手に取り、声に出して読んでみたくなる本があります。
昭和59年から平成20年にかけて童話屋から刊行された、工藤直子さんの『のはらうたI~V』です。
小学校や中学校の国語の教科書で、この本の詩に出合った方もいらっしゃることでしょう。
作者の工藤さんには、野原に住む生き物や植物、風や雨、虹や月など自然の声が聴こえてきます。
「のはらむらのみんなが しゃべるたびに、うたうたびに、わたしは それを かきとめました」と、工藤さんは「のはらみんなのだいりにん」を名乗ります。
詩には「かまきりりゅうじ」や「あめひでき」など、声の主の名前が記され、読者は大人も子供も、そのユニークな名前に心ひかれ、親しみを感じていきます。
ひらがなで書かれた野原のみんなの言葉を読み進めていくと、生き物や植物の命、自然の息吹を感じます。それは、工藤さんが第三者として生き物や植物、自然などを傍観的に見るのではなく、「そのものになりきって」対象を分かろうと、その声に耳を傾け、内側からその声を語っているからでしょう。
これは、子供のわかり方と同じです。だから、就学前の幼い子供たちも、工藤さんの詩に共感し、味わいます。
工藤さんは、「のはらむら」を通り過ぎる季節の流れにひたっていると「まるで じぶんのこころのなかの けしきみたいだなあ」と記しています。のはらむらのみんなの声には、生きることの喜びと同時に切なさも感じます。それでも、自分らしく生きるみんなの声に、私たち大人も癒やされ、励まされるのです。
4月、始まりのとき! 『版画 のはらうたV』(くどうなおこ・詩、ほてはまたかし・画、平成25年、童話屋)から、「こうさぎきょうへい」くんの詩を紹介します。
「いっしょうけんめい・こうさぎきょうへい
のはらのまんなかで みみをすますと きこえるきこえる ちょうちょがはなのみつをすうおと ありんこがクローバーにかけのぼるおと ああ みんな いっしょうけんめいだ なんだか うれしくて きみにあいたくて ぼくは かけだした いっしょうけんめい」
私たち人間の世界でも、いろいろな「いっしょうけんめい」が聴こえています。
読者の皆さまも、お気に入りの詩を見つけてみませんか。(国立音楽大教授 林浩子)