平成3年に福音館書店から刊行された片山健さんの『コッコさんのともだち』は、子供が保育園で友達と出会い、ゆっくりとその関係を作り、広げていく様子が描かれています。

コッコさんはなかなか皆と遊べず、保育園でいつも独りぼっち。先生から「さあ ふたりずつ てを つなぎましょ」と言われて困ってしまいます。でも、コッコさんと同じように手をつなげないでいるアミちゃんがいました。「もじもじ」も服の色も同じ2人は、そおっと手をつなぎます。

幼い子供が初めて集団生活に入っていくときの期待感や緊張感は、子供だけでなく保護者も同様です。「うちの子、皆と同じようにできていますか」「1人で遊んだって言うのですが、大丈夫でしょうか」。幼稚園に勤務していた頃、入園当初に保護者からよく聞かれた言葉です。
子供は、「人」「もの」「こと」に出会い、自ら関わり、関係をつくりながら自己や世界を広げていきます。その出会い方や関係のつくり方は一人一人違います。
2年保育の4歳児クラスに入園して半年間、ソウ君は友達の様子をクールな表情でひたすら眺めていました。お母さんは「何もせず、ずっと見ているだけで良いのでしょうか」と心配でした。でも、友達から少し離れた所まで近づいていく際に私の手を引く強さや、視線を向ける長さから、彼は友達やその動きに関心を持っていることが分かりました。
また、園内のいろいろな場所にソウ君の姿がありました。「誰とも遊んでいないのに、〇〇君がこうした、幼稚園にはこんなものがあるって友達や園のことをよく知っています」とお母さん。秋を迎える頃、ソウ君が自ら積み木で基地を作り始めたとき、その形や作り方はクラスの友達と同じでしたが、ソウ君の基地には旗が飾られていました。
それは、園舎の一番端に位置する年長組の子供が作った基地と同じでした。周りの子供たちが「僕も欲しい」「どうやって作るの」とソウ君をまねたり、尋ねたりする中で、友達との関わりが生まれていきました。「半年間、十分に探索していろいろなことを自分の中にため込んでいたんですね」。お母さんはそう話しました。
子供はさまざまなものやことをきっかけに、人との関わりが生まれていきます。大人は、子供一人一人の世界の広げ方やそのペースを焦らずゆったりと見つめ、支えていきたいものです。(国立音楽大教授 林浩子)