■受け継がれるバトン
平成27年に岩波書店から刊行された『せいめいのれきし 改訂版』(バージニア・リー・バートン文・絵、いしいももこ訳、まなべまこと監修)は、「地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし」です。
表紙をめくると、見開きのページに「古生物の図鑑」が描かれ、地球の長い時間軸の中に、驚くほど多くの植物や動物が存在していたことがわかります。次のページからは劇場の舞台で天文学者、歴史家などさまざまなナレーターが、46億年前の地球誕生から古生代、中生代、新生代、人間の時代へと生物進化の歴史を語ります。舞台に登場する主役はそれぞれの時代の生き物たちで、進化によって命が受け継がれていることに気付かされます。その内容は、幼い子供たちにとって易しいものではありません。しかし、幼い頃にこの本に出合い、魅了されていく子供たちが多くいます。
3歳のナオ君は、鮮やかな黄色の表紙の中に大好きな恐竜を見つけ、この本を手にしました。初めは第2幕の恐竜時代に見入っていましたが、4歳になると逆方向にページをめくり、恐竜出現前の生き物や背景に関心を広げていきました。幼いなりに地球や生命の時間軸と進化に気づいていったのです。絵本の貸出日に、ナオ君が幼稚園からこの本をお家に持ち帰ったとき、驚き、懐かしんだのはお父さんでした。お父さんも子供の頃、この本(昭和39年刊行版)を繰り返し読んでいたのです。時代を超えて読み継がれていく1冊の本の時間軸もあります。
物語の最後に記された「さあ、このあとは、あなたのおはなしです。主人公はあなたです。」というバートンの言葉には、命を懸命に生きることへのエールを感じます。裏表紙の太陽も満面の笑みです。監修者の恐竜博士、まなべまこと(真鍋真)さん著『深読み!絵本「せいめいのれきし」』(岩波書店、平成29年)を一緒に読むと、さらにこの本の面白さを味わうことができるでしょう。(国立音楽大教授・同付属幼稚園長 林浩子)