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《映画でぶらぶら》戦場へ向かう女たち。その過去と苦しみを、カメラは決して見逃さない


 フランス、ドイツとヨーロッパ映画が豊作な今月。そのなかでもISと戦う女性兵士たちという、実際の事件にもとづく題材を映画化した『バハールの涙』には、強く心を打たれた。

 『バハールの涙』は、クルド人女性バハールの苦難の半生を描く。弁護士としての生活から一変、夫を殺され、ISの性奴隷となった彼女は、同じ境遇の女性たちを連れ、命を賭けてそこから逃げ出す。数カ月後、バハールは、拉致されたままの息子を救うため、女性兵士となる道を選ぶ。一緒にISの手から逃れた女性ラミアの「被害者でいるよりも戦いたい」という言葉に促されたのだ。

 映画のもうひとりの主人公は、黒い眼帯を付けた戦場記者のマチルド。彼女は、他の記者たちが撤退した後も前線に残ることを決め、バハールが率いる部隊「太陽の女たち」の取材へやってくる。当初は取材を煙たがっていたバハールも、マチルドの高い職業意識に心を許し始め、ふたりは互いの過去を打ち明け合う。

 取材中に片眼を失い、PTSDに苦しんでいるマチルドは、同じく戦場記者だった夫を紛争地で亡くしたばかり。それにもかかわらず、幼い娘をフランスに残して取材を続けていると知り、「なぜそうまでして戦場に来るのか」とバハールは問いかける。だがその問いは、バハールがなぜ戦うのかという問いとも重なり合う。

 常に緊迫感あふれる戦地で、マチルドのカメラは、いつも兵士たち個人の顔に向けられる。銃をかまえる険しい顔と、笑い歌い踊る無邪気な顔。マチルドの視線は、この映画が持つ視線と同じだ。ISと戦う女たちという大きなテーマを扱いながらも、映画は、あくまで個人のドラマを追い続ける。バハールも、ラミアも、兵士たちそれぞれに過去があり、名前のつけようのない強い苦しみを抱えている。そのすべてが、彼女たちを戦場に向かわせる。女たちの小さな物語を記録し、伝えることこそ、記者の役目。映画もまた、そんな小さな物語を私たちに見せてくれる。

 地雷の埋まった道で、一歩、また一歩と、足を踏み出すことの恐怖。兵士たちは、それでも前に足を踏み出すしかない。迷いを吹っ切った女たちの顔は、強く、美しい。だがその美しさの裏にある悲しさをカメラは決して見逃さない。

metro1901_eiga_inner01.jpg戦争記者マチルドのモデルは、片眼を失明しながらも報道を続けた亡きメリー・コルヴィン。彼女の評伝映画も昨年製作され、日本での公開が期待されている。

This Month Movie『バハールの涙』

  ある夜、クルド人地区でISの襲撃を受けた弁護士のバハールは、夫を殺され、自分はISの奴隷となってしまう。数カ月後、決死の覚悟でISから逃れたバハールは、行方不明の息子を救うため、女性武装部隊「太陽の女たち」のリーダーとしてISと戦うことを決意。その戦場へ、フランスから片眼を失った戦場記者マチルドがやってくる。マチルドの目を通じ、女兵士たちの過去と強い決意が浮かび上がる。

1月19日(土)より新宿ピカデリーほかにて公開。

監督:エヴァ・ウッソン
出演:ゴルシフテ・ファラハニ、エマニュエル・ベルコ


旧作もcheck!

『母の残像』
 

metro1901_eiga_inner02.jpg©MOTLYS-MEMENTO FILMS PRODUCTIONNIMBUS FILMS-ARTE FRANCE CINEMA 2015 All Rights Reserved
 イザベル・ユペール演じる戦争写真家の死を、残された夫や息子がそれぞれに受け入れていくまでを描いた異色のドラマ

監督:ヨアキム・トリアー 
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、イザベル・ユペール
DVD:4800円
販売元:紀伊國屋書店

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