Text: Sayoko Kusaka Photos: Shigeo Kosaka Edit: Kohei Nishihara(EATer)

theme #04 生理を知って、話して相互理解を目指す[フェムトーク]


女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来に繋げる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。


生理の常識に一石を投じる

 

 「#NoBagForMe(私は袋はいりません)」をご存じだろうか。日用品大手のユニ・チャームが、インフルエンサーらと2019年に始動したプロジェクトで、生理をタブー視する風潮へ一石を投じた。日本では、ドラッグストアやコンビニなどで生理用品を購入すると、茶色い紙袋などで見えないように包装される。このプロジェクトでは、その紙袋を生理をタブー視する象徴として捉え、隠さなくてもいいパッケージのタンポンを発売するなどした。現在は、企業の生理研修をサポートし、プロジェクトは新たなフェーズへと発展している。プロジェクトについてユニ・チャーム広報室の藤巻尚子さんに話を聞いた。

 「きっかけの一つにあるのが、首都圏で働く男女2000人に聞いたアンケートの結果でした。生理に対して約8割の女性が男性に理解してほしいと回答する一方、理解していないと回答した男性が5割。このギャップを埋めることによって、より働きやすい職場の実現や、女性の活躍の推進に寄与できると考え、生理用品の紙袋について、『私はいらない』という選択肢の提示や、利用者間の発話を促す取り組みを推進しました」

 #NoBagForMeの活動を開始した2019年は前年と比べ、いいねやリツイートは77万回、タンポンの使用率は5・5%増えている。「生理は我慢するものではなく、ケアによって不快を軽減できるという認識も少しずつ浸透していると思います」。

 生理用品の歴史は、60年前に遡る。ユニ・チャームの創業者高原慶一朗氏は、1962年の米国視察中にスーパーでナプキンやタンポンが堂々と山積みされていたのを見て驚いた。当時の日本では、生理用品は店員に言わなければ出てこない〝日陰者”として扱われていたからだ。この景色を変えることを決意した高原氏は、生理用品の開発に着手した。「ユニ・チャームの企業理念は『NORA&DORA(※)』。心地よい社会の実現です。いまでは女性だけではなく、生活者すべての人に寄り添うことを掲げています」

 

受講者の満足度は95%以上
みんなの生理研修とは

 2020年にはじめた生理研修の初年度の応募数は25社。それが昨年には、自治体や教育機関などにも広がり約100社に急増した。

 「応募理由の多くは、社内の相互理解によるコミュニケーションの改善のため。そして女性活躍推進です。生理研修では、生理や女性の健康、生理ケアの選択肢を知り、最後に男女でディスカッションをします。受講者の満足度は95%以上で、管理職や社長も受講するケースもあります」

 女性参加者からは「参加者同士では共通の話題ができて安心して話せる」や、男性参加者からは「不調を伝えやすい雰囲気を作りたい」といった声が寄せられている。藤巻さんらは、研修後もアクションにつながるように働きかけており、生理休暇が有給になったり、トイレに生理用品を置くようになったりと、企業や団体ごとに明らかな変化が起きている。

 「生理について知識を高めることは、従業員のパフォーマンスを上げると同時に、企業価値の向上にもつながるはずです。今後こういった研修がもっと必要になってくると思います」

 性別を問わず他者が抱えるカラダの変化や悩みに寄り添い続けることは、双方に生きやすく心地よいコミュニケーションの一歩になるのではないだろうか。生活者の不快を取り除き、快を追求して60年走り続けてきたユニ・チャーム。その企業理念を大切にする藤巻さんらの言葉から大切なヒントをいただいた気がする。

※ユニ・チャームの企業理念。Necessity of Life with Acti
vities & Dreams of Life with Activitiesの頭文字をとったもので、NOLAは課題解決、DOLAは夢や理想といった課題提起の領域。、当初『L』は『Ladies』だったが2001年に『Life』に変わった。

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#NoBagForMe2019プロジェクトから生まれたタンポン(現在は販売終了)。パッケージデザインは、SNS投票で1番人気だった「CAT」案が採用された。


《INTERVIEWEE》

話そう、知ろう、生理のこと

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〈about〉#NoBagForMe

2019年6月に、ユニ・チャームの生理用品ブランド「ソフィ」が、生理に対するこれまでの価値観に変化を起こすべく発足させたプロジェクト。生理用品のパッケージデザイン投票やイベントを実施し、20年から昨今の女性の健康意識の高まりも踏まえ、“生理についての知識向上と相互理解を促進するため”に、生理や生理ケアの正しい知識、さまざまな生理ケアの選択肢を広げる活動を行っている。

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ユニ・チャーム株式会社
ESG本部広報室
藤巻 尚子

2015年入社。入社から約4年間は営業部門に配属、その後広報室へ異動。社内報も兼任。


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メトロポリターナ編集長
日下紗代子

10月からメトロポリターナ新編集長として就任。風邪を引かないのが強みだが、自身の身体のケアには少しウトイ自覚あり。

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Fem Care Project

「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。


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