女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
お洋服と同じようにお客様のニーズや悩みに応える
「ミチカケ」は、2019年に誕生した百貨店初のフェムテック関連の商品を扱う常設売り場。JR大阪駅直結の大丸梅田店の5Fフロアにあり、対面接客ならではのリアルな「お客様」の声に触れ、さまざまなお悩みに寄り添う商品やサービスを提案してきた。2019年のオープン当時は、いまほどフェムテックという言葉も普及していなかったにもかかわらず、なぜ老舗百貨店は常設売り場をつくったのか。ミチカケの立ち上げに携わった、大丸梅田店の髙橋知世さんにお話を聞いた。
「百貨店と謳っているのに、大事なところのお悩みに応えられていなかったと気づきました」
きっかけは、5Fフロアの改装だった。大丸梅田店があるキタ地区は、多数の商業施設がひしめき合っているエリア。人を呼び込むためには、訪れるための明確な目的が必要だった。
「モノがあふれすぎていて、買い物するだけで疲れてしまう。そんな疲れた気持ちやネガティブな感情にも寄り添ってくれる売り場があったらいいね、と女性スタッフからのアイデアがありました」。ちょうどそのタイミングで、女性のためのセルフプレジャーアイテムを展開している「iroha」をポップアップ展開する機会があった。
「セルフプレジャーアイテムは、若い女性が主なユーザーだと思っていたのですが、予想と全く違いました。百貨店本来の主要客層である40〜50代の女性がたくさん来店されたんです。いままでずっと夫婦生活に悩みを抱えたまま過ごしてきたと、泣きながらご相談いただいたお客様もいらっしゃって。そこで、世の中でタブー視されがちな、性や生理といった分野にフォーカスして売り場づくりを進めることにしました。ミチカケは、“月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う”。コンセプトからまずできあがったゾーンなのです。
はじめは手探りでした。でも、性や生理などを特別視していたのは私たちのほうで。店頭に立つ販売員さんは、お洋服を売るのと同じように、お客様のニーズをちゃんと引き出し商品を提案してくれました」。そう髙橋さんは振り返る。商品の見せ方と接客を工夫し、出店企業と大丸梅田店がお互いの長所をいかすことによって、客数は次第に伸びていったという。
これもフェムテック!?
誰でも身近に多様な商品やサービスを
「最近では、若いカップルでのご来店も増えました。『妻が生理で辛いと悩んでいます』と一緒にお品物を選ばれる方もいます。『デリケートゾーンケアを娘に勧められて買いに来ました』や、初潮を迎えるお嬢様と『生理に使える新しいアイテムがあると聞いて一緒に来ました』など、親子での来店も増えました。売り場にアイテムがあることで、新たな会話を生んでいると実感しています」
5月25日からは「女性の健康のためのアクション国際デー」(※)に伴い、通常の売り場を拡大して60社が出展する西日本最大級のフェムテックイベント「ミチカケ・ウェルネスアクション! vol.1 フェムテック展」も開催する(企画:ウーマンズ)。「フェムテックという言葉に注目が集まる一方、まだまだ偏りを感じています。女性のウェルネスに関するお悩みや課題はもっと身近で多様であることを知ってほしい。そこで今回は多様性をテーマに、女性特有のさまざまな健康課題に着目した企業にお声がけしました」
髙橋さんは最後にミチカケについて「私たちは医療機関ではないけれど、背中を押したり、安心を得る材料の一つのきっかけになれたら」と話してくれた。普段不調を感じてもついやり過ごしてしまう私たちにとって、フラッと買い物に訪れた先に、ミチカケのように悩みに”寄り添ってくれる空間”がある。日常生活の延長線にそんなココロとカラダの味方がいると思うととても前向きな気持ちになった。
※「女性の健康のためのアクション国際デー」は5月28日
ミチカケ・ウェルネスアクション!
vol.1 フェムテック展
場所:大丸松坂屋百貨店 大丸梅田店
期間:5月25日(水)〜31日(火)
https://shopblog.dmdepart.jp/umeda/michikake/detail/?cd=086095&scd=000027
ミチカケが、女性のヘルスケア市場を専門に企業の支援をしているウーマンズとコラボする西日本最大級のフェムテックイベント。13Fに約60社が並び、5Fでは日替わりで体験イベントを開催。27日〜29日はハズレなしのプレゼントが当たる抽選会も。「フェムケアプロジェクト」は公式ガイドパンフレットを制作する。

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
10月からメトロポリターナ新編集長として就任。風邪を引かないのが強みだが、自身の身体のケアには少しウトイ自覚あり。
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。