女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
フェムテックという言葉とともに、第3の生理用品として認知が広がっている月経カップ。なかなか手を出すにはハードルを感じている人も多いはず。私もその一人だ。元競泳選手で現在は月経カップを販売する企業「インテグロ」の社員と生理ケア・月経カップアドバイザーの肩書きをもつ木下綾乃さんは、そんな不安を取り除き、生理期間のストレス軽減や、自身のカラダと向き合うきっかけとして、月経カップの活用を提唱している。そのメリットや変化について、自身の経験をもとにお話を聞いた。
新たな選択肢に「月経カップ」
木下さんが月経カップに出合ったのは5年前。競泳引退後で、その快適さに衝撃を受けたという。「普段と同じような気持ちで過ごせることに驚きでした。タンポンとの違いは、膣から取り出すためについている紐がない。ショーツも普段用のショーツがはける。あれ、今日生理だっけ?というくらいの気持ちになりました」
月経カップは、挿入型の生理用品で、膣に装着したカップに経血をためて使用する。日本では使用の歴史が浅く、ブランドや生産国よって異なるが、最長12時間使用できるので、何度も交換のためにトイレにいく必要がない。毎日正しい手入れを行うことで繰り返し使用することもできる。
インテグロが月経カップユーザーに聞いた調査(※)では、月経カップを使い始めた理由について7割の人が「生理期間をもっと快適に過ごしたいから」と回答している。「ムレやにおい」「経血漏れ」「かぶれやかゆみ」などの不快症状が多くの動機づけになっていた。同社代表の神林美帆さんは、以前より生理の不快さなどを声に出しやすくなった空気感と、エコに対する関心の高まりが、月経カップの認知につながっていると分析する。
「月経に関するストレスも千差万別です。ある視覚障害者の方が月経カップを使用して『生理用品の在庫管理をしなくてよくなった』とお話してくださいました」。神林さんは、自分にあった生理用品に出合うことで世界が変わったという声も多いと話す。
自分のカラダと共同作業
取り入れ方も人それぞれ
では、実際に使用するには、どうしたらいいのだろう。木下さんは最初が肝心だという。「よくある質問や、使い方、選び方など正しい情報をキャッチすることです。模倣品も増えているので製造販売元の企業を確認するなど、安すぎるものには注意が必要です」
また、使い始めは慣れるまでに時間がかかる。コンタクトレンズのイメージに近い。「出し入れに少し工夫が必要です。でも骨盤底筋という存在を知り、動かすとカップが上下して、だんだんコツがつかめてきます」。自分のカラダと”共同作業”。その感覚が大事だという。
「月経カップを使うときって、自分のカラダと向き合うんです。膣の長さ、角度。そして経血量と色は一目でわかる。カップを取り出してすぐの経血は、血の匂いで。色も鮮やかな赤で美しい。いろんな発見があって、あれ、生理が楽しくなってる!っていうのが、私にとって快適さの次にきた衝撃でした」
最近では、10代20代の使用も増え、50歳を目前に月経カップデビューしたという声もある。吸水ショーツとの併用など、取り入れ方もさまざまだ。
「本当は、現役のときに知っていたかったです。それで水泳をやっていたらもっといい成績を残せたかもしれないという悔しさがあります。過去に戻ることはできない分、これからは、いままさに悩んでいる人に届けたい。その思いが強いです」
正しい知識をもって、選択肢のひとつに出合う。それは、自分にあう生理ケアを探す旅、自分のカラダを知る旅でもある。生理と向き合うことは、まだ見ぬ新しい世界への一歩かもしれない。
※インテグロ株式会社が販売する月経カップをユーザーアンケート
人数 : 282人
調査期間 : 2021年6月22日〜28日
サイズや硬さもさまざま。女性器の構造や仕組みを正しく理解し、自分のカラダを知ることが大事だという。
インテグロ株式会社
生理ケア・月経カップアドバイザー
木下綾乃
3歳から水泳を始め、約18年間競泳選手として活躍。その後、月経カップと出会い、生理ケア&月経カップアドバイザーに。これまでカスタマーサポートとしてたくさんの月経カップビギナーの方々をサポートしてきた経験から、カップの選び方や使い方、経血量やライフスタイルに合わせた生理ケアについてワークショップなどを開催している。

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
10月からメトロポリターナ新編集長として就任。風邪を引かないのが強みだが、自身の身体のケアには少しウトイ自覚あり。
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。