女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
日曜の夜7時に「カラフルブーケ」という文化放送のラジオ番組がある。“お茶の間トーク”をテーマに、フェムテックや性などさまざまな価値観や考え方を話し合うことを広めていき、躊躇なく会話できるきっかけづくりを目指している。ゲストの選定やテーマ設定の幅の広さがポイントで、どの回も本当におすすめ。何よりパーソナリティを務める福井セリナさんの、肩肘はらない聞き心地のよい空気感が魅力的な番組だ。現役のフェムケア薬剤師であり、タレント活動も行っている福井さん。普段は”おはなしあいて”として番組を率いるなか、気づいたことや、発信を続けることの意義についてお話を聞いた。
ゲストは全員“おともだち”
「もともと学生時代にグラビアでデビューして、その頃から体調と闘うことが多かったです。見られる仕事なので、体型も人と比べてしまいコンプレックスを感じていました。環境の変化の中でさまざまな気持ちに揺さぶられていて…。自分のメンタルを保つためにいろいろ調べていく中で、ホルモンバランスを正しく理解することの大事さを知り、フェムテックやサステナブルといったテーマに興味が湧いていきました。そんなときに『カラフルブーケ』のお話をいただきました」
番組づくりでは、福井さんと、ディレクターの神谷友里杏さん、放送作家の原口靖広さんを中心にゲストやテーマを決めていくが、「女性だけで番組をつくると、話が早く進んじゃうんですよね。だよね、だよね、ってすぐ共感できることも、男性の原口さんからしたら、え、そうなの?って。その部分をしっかり説明しようって。こういうギャップって、性別、年齢問わず日常的にあると思うんです。そこを楽しみながら伝えられたらなって。だからこそ、ゲストとして来ていただいた方を全員“友達”だと思ってお話しするようにしています。お茶の間で食卓を囲みながら、友達として話を聞く。その力の抜けた雰囲気で、一見とっつきにくいと思われがちなジェンダーやSDGsのことでも、全世代にすっと聞いてもらえるように心がけています」
自由に生きやすく
身近な人の頑張れる力に
多種多様なゲストを迎えるにつれ、福井さん自身にも大きな変化があった。
「自分が見ている世界の狭さに気がつきました。もともと自分は自由な人間だと思っていましたが、進学校で中高大とまっすぐきて、それって結構狭い世界で。いろいろなことにチャレンジする人、問題を解決しようとしている人に番組を通じて出会い、こんなにも世界は広かったんだって気づきました。めちゃくちゃ生きやすくなりましたよ。たとえば、エンヴィ ガブリエラ(※)という自称“オネェ集団”のパフォーマーのみなさんがゲストに来た時。それまでそういう方にお会いしたことがなくて、どこまで触れていいのか、受け入れてもらえるのか不安だったんですが、話をしてみたらものすごくオープンで。恋愛の話やメイクの話、男性ホルモンで皮脂がやばいっていう話とか(笑)。そのとき自分の中に風穴があいた感覚があって。なんでも話してもいいんだ!ということを教えてもらいました」
一方で、同性同士のカップルがゲストの回では涙したことも。
「お互いをリスペクトし合い、愛し合うふたりというのがすごく伝わってきて。それでも結婚できない日本の現状があって。お話をしていると、みなさんすごくポジティブで、日本が良い方向に変わっていっていると感じるのですが、それでもなおやっぱり変わっていないことがあることを痛感した回です」
「昔は発信しても意味がないと思ったこともあります。でも、ゲストと一時間話しただけで、私自身、風穴があいちゃってるんですよね。身近な人の価値観は変えられる可能性がある。発信を続けて周囲の人から自由にしていきたいと、いまは心から思います」
来る3月8日の国際女性デーでは、「日本社会はまだまだ女性が頑張りたくても頑張りづらいところがあります。お互い励まし合って、へこたれないように、一致団結していこうぜ!といったエールを届けたい」と、福井さんは今日も肩肘をはらずゆるやかにおしゃべりを続ける。そうやって少しずつ”お茶の間”から“風穴”があく瞬間が増えたなら。明るく力強い言葉から、そんな希望とパワーをいただいた。
※オネェがお届けする総合エンターテイメントユニット ENVii GABRIELLA(エンヴィ ガブリエラ)
収録する福井さん(右)と原口さん。番組プロデューサーの浅野真優さんによると、ミニコーナーではなく、週末のゴールデンタイムで1時間番組を作ることにもこだわったそう。こっそりではなくしっかり。「以前別の番組でご縁のあった福井さんを同僚から紹介してもらって。お会いした瞬間に『この人だ!』って思いました」スタッフ一同意気投合してスタートした。
「カラフルブーケ」の過去の放送回はこちらから!
https://podcastqr.joqr.co.jp/episodes

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
“おこたでみかん”
そこからはじまる世界!
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。