女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
3月に原宿で開催されたフェムテックイベント「WEHealth2023 わたしを愛でる2日間」。フェムケアプロジェクトもメディアパートナーをつとめるこのイベントは、2日間で約900人の来場者を迎えた。イベントを仕掛けたのは2人の起業家、「ステルラ」代表の西史織さんと「トレブル」代表の原三由紀さんだ。数あるフェムテックイベントのなかでも、「アットホーム」という言葉がぴったりな空間をつくりだした2人。ゆるくつながりながら「楽しく自由に」と語る西さんと原さんが、イベントに込めた”想い”について話を聞いた。
女性を応援したい気持ちが重なった
「もともと、自分自身のメンテナンスは好きなんです」。そう話す原さんは、普段は企業のブランディングなどに携わるアートディレクター。今回も、イベント全体のアートディレクションを担当した。
「私には、女性が自由に生きることができる社会づくりに貢献したいという想いがあります。その一環でアロマの事業も始めました。激務が続き、自分が本当に大変なときに、香りでリラックスできるということに気づいて。それ以来、香りを大切にしています」
西さんは、妊活サポートなど女性のライフプランに関わる事業を展開しているフェムテックの起業家だ。
「ステルラのミッションは、女性の生きづらさに対して、サービスを通じて選択肢を提供し、女性自身が改めて女性でよかったと思える世界をつくるというものです。でも、サービスをつくるだけでは、本当に必要としている人に届かない。まずは、お客様自身が、自分の体に関心をもって選択肢を見つける機会をつくる必要があると思ったんです。それで、2年前に啓蒙を目的としたイベントWEHealthを始めました」
女性が生きやすい社会づくりを目指す原さんと、女性の生きづらさを解決したい西さん。同世代の2人は、偶然居合わせたコワーキングスペースでお互いの”想い”を語るうちに意気投合。そこから二人三脚のイベント企画が始まった。
自分を甘やかす方法に出会うために
身近な女性にヒアリングをし、ディスカッションを繰り返して決めたイベントのテーマは「ご自愛」だった。
「他人には『休んでね』と言うのに自分は働きづめだったりと、自分自身のための行動を後回しにしてしまう人が多いですよね。足りてないのはそこだ!と確信して決めました」と西さんは語る。会場を訪れた人が、自分を大切にすることの重要性に気づいてほしい。その気持ちをもとに、イベントをつくっていった。フェムテックに詳しくない人でも楽しめるよう、会場の壁にはホルモンバランスの仕組みがわかる解説ボードを設置したり、生理への意識を投票によって認識できる参加型の展示も用意した。帰り際には「ご自愛くじ」も配った。アンケートによると、来場者の満足度も高かったという。
その一方で課題も見えてきた。原さんはこう語る。
「自愛の手段は人それぞれだからこそ、自分のことを知らないと、よいケアも見つけられないということに改めて気がつきました。自分を知ることが『ご自愛』への第一歩なんです。私にとってのアロマがそうであるように、来年は誰もが自分を甘やかす方法に出会える場をつくりたいと考えています」
もちろんイベント以外でも、2人は精力的に事業を推進する。西さんは、ホルモンバランスを可視化できるサービスを構築中。原さんも、アロマ事業を本格化し、香りを活用したブランディングの法人向けサービスを検討している。
「私も原さんも、それぞれ自分の会社があって、違うバックグラウンドがあるからこそ、いいものができている気がしていて。2030年、イベント10周年のときにはお互いの事業を成功させて、イベントのあゆみを振り返るトークショーをしたいと夢みています」
意外にも、出会うまでは孤独だったと話す2人。それぞれの“想い”を共有したことで、お互いの事業を平行しながらも、さらなる大きな夢にむかって走っていた。“想い”があれば、ほんの少しのアクションをとってみれば、きっと仲間が見つかる。いきたいところに行ける。そう勇気づけられるフェムトークだった。

「WEHealth」会場内での西さん(左)と原さん(右)。
メトロポリターナ編集長
日下紗代子
自分にとっての“ご自愛”を考えてみよう!

Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。
