女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
おかげさまでこの10月、フェムケアプロジェクトは3周年を迎えることができました。2019年ごろから日本国内に広がってきた「フェムテック」というキーワードに着目し、女性特有の健康課題や、働き方について考える取り組みとしてスタートしたこのプロジェクト。連載「フェムトーク」を皮切りに、特集やイベントを通じて見えてきたのは、これまで、生理や更年期といった、女性特有の健康課題を知る機会が少なく、個人の問題として見逃されてきた社会の姿です。忙しい日々の中で、自分の心の声に耳を傾けることや、家族や友人、身近な人に相談すること自体がだれでも簡単ではないという現実。ホルモンのせいで、頑張りたいことを頑張れない。もっと早く知っていれば、自分にとって大事なことを諦めなくて済んだかもしれない…そんな悔しさや、“これまで”を変えていきたいという希望の声。読者の皆様からも、さまざまな女性が抱えているこの社会全体のリアルな現在地を教えていただく3年間でした。
そしてそれは同時に、現在地と日々向き合い、今日より明日を、少しでもいい未来にしたいという、強くてやさしい想いをもつ人が、じつはたくさんいるということを知る“旅”でもありました。ある産婦人科の先生は、問診を通じて多くの女性の悩みを聞く中で、悩みの根本にある課題を解消するために専門領域を広げていました。また、あるフェムテック企業の起業家は、自身の女性特有の疾患を契機に起業を決断し、これまでになかった選択肢をつくろうと奮闘していました。こうした想いと行動は、3年経ったいま、性別や年齢を問わず、水面に石を投げて広がる波紋のように、広がっているということも、プロジェクト推進の源になっています。
では、私自身の変化は? というと、初回のフェムトークを振り返ると、「心と身体の『ケア』は自分自身との対話から始まるということ」と書いていました。助産師の濵脇文子さんのお話をきいて、自分の心の声に耳を傾けることや、一度立ち止まってみるということの大切さを、30代後半に突入してようやくですが、身に染みて感じています。
知るだけで少しだけ心が軽くなる
フェムケアプロジェクトは、毎年3月8日の「国際女性デー」をひとつの山場に、2023年は「フェムテックを、もっと!」、2024年は「知るって、やさしい一歩!」と、コンセプトを掲げ性別や年代を超えた相互理解と、対話を促す発信を行ってきました。今年7月には、企業や職場におけるDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)推進の課題を共有し、解決を目指すプログラム「DEI Transformation HUB」=「トラハブ」を、Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社と共同で立ち上げました。たとえば、世代の離れた若手との接し方がわからない。子育てと仕事を両立したい気持ちを共有できない。男性にも、ホルモンの急減に伴う心身の不調が起きることが知られていない。ひとり一人に事情があり、困っていることがあります。でも解消する手段を見つけられずに“モヤモヤ”した気持ちを抱えている人が少なくない。「フェムテック」という言葉とともに、これまであまり公に語られることなく、個人が個人の問題として我慢し諦めていた課題を、みんなで解決していこうという機運そのものは、じつは女性に限ったことではないことを、私たちはプロジェクトを通じて気づきました。
来る11月19日の「国際男性デー」では、プロジェクトとしてはじめて大型のイベントを企画しています。女性特有の健康課題があるように、男性特有の健康課題もある。上司や部下、同僚や家族、どこかで無意識に、これまで疑うことなく投げかけていた言葉や行動が、誰かのモヤモヤにつながってないだろうかと、一度立ち止まって考えてみる機会になればと企画しました。イベント会場は、11月10日(日)東京国際フォーラムです。コンセプトは「ぼくたちはどう生きるか」。知識をもつことで、身近な人の見え方が変わったり、とたんにできることが増えたり、男性は、自分だけじゃないと知るだけで、心が少し軽くなったりするかもしれません。来月のメトロポリターナ11月号とともに、ひとり一人が自分らしく、心身ともに健康に豊かに暮らせるこれからの一歩を後押ししていきます。さらに11月11日(月)はトラハブ第2回を丸の内で行います。こちらもぜひ皆様のご参加をお待ちしております。一緒に、そのモヤモヤを発散し、私たちにとってのいい未来につなげましょう! そんなフェムケアプロジェクトですが、4年目も、どうぞよろしくお願いいたします。
▼11月10日「ぼくたちはどう生きるか」
イベント詳細はこちら
https://www.sankei.com/special/femcareproject/event/2024-nov/
▼8月開催の「トラハブ」レポートと
次回案内はこちら
https://metropolitana.tokyo/ja/archive/fcp_torahub_event_report_01

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
フェムケアプロジェクトも3周年!
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。