東京メトロ沿線で見つけた、メトロポリターナ編集部が気になるあれこれを気ままにご紹介。今回は、編集部員・渡邉が見つけた、浅草で手に入る美味しい精進料理のお菓子をご紹介します。
浅草/悦納(えつのう)
先日、浅草の精進料理店で、こうした店ではめずらしいお菓子を見つけました。それは、中国伝統菓子「月餅(げっぺい)」です。精進料理とは、肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品に加え、ニンニクやニラといったニオイの強い食材「五葷(ごくん)」を使用しない料理を指します。個人的に、お寺で振る舞われる質素な食事であったり、どうしても味気ないというイメージが強かったのですが、このお菓子がとても美味しかったので、今回はこの「月餅」の紹介をしたいと思います。

「月餅」とは、ナツメやナッツ入りの餡を生地で包み、月に見立てた形に焼き上げた中国発祥のお菓子のこと。ニンニクやスパイスなどを入れた、クセのある味もあるそうですが、日本で流通しているほどんどのものは、日本人が食べやすいようにシンプルな味わいに仕上げられているのです。またその多くは、動物性油脂や卵などが使われているそうですが、浅草の「悦納」では、さまざま食の嗜好を持つ人でも食べられるよう、精進スタイルの「月餅」を考案したのだそうです。

店長の朱さんに、本場中国の「月餅」について伺いました。「中国では、中秋節(旧暦の8月15日)に『月餅』を食べながら、月に幸福を願う風習が3000年以上前から続いています」。朱さんは、添加物をはじめ、たっぷりの砂糖が入っているものが出回っている状況を変えようと、健康的な精進スタイルで「月餅」をつくるところに行き着いたそう。中秋節は、日本では“中秋の名月”とされている十五夜。「月餅」は、日本のお月見文化にも通ずる、中国伝統の食文化だったのですね。

「悦納」の月餅は、なんといっても餡ごとに違う芸術的な形と、親しみやすい味わいが魅力。餡の種類は、紀州梅、黒ゴマ、ナツメ、マンゴー、コーヒーのほか、季節の餡があり、この秋から冬にかけては、金木犀やヨモギなどが限定で登場するそうです。なかでも私が感動したのは、みずみずしくなめらかで、まるでプラムのようなフルーティーな味わいの、紀州梅の餡。どの餡も素材の香りが活きているので、好みのお茶と合わせて、一息つきたいときにピッタリです。

「月餅をはじめ、当店のメニューは“すべては自然からの授かりもの”という『精進の心』を伝えています。心と食がつながる、ヘルシーで環境に優しいものをお届けしています」と話す、朱さん。今年の中秋月は、10月1日。つくり手の心を感じる「月餅」を食べながら、中国のお月見文化を感じてみてはいかがでしょうか。「悦納」では、月餅のほかにも、さまざまな精進菓子を販売しています。事前予約制なので、気になる人は、電話やFacebookから、チェックしてみてくださいね。
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渡邉絵梨(わたなべ えり)
メトロポリターナ編集部員。旅と散歩と美食が大好物。趣味は、カレーとプリンの食べ歩き。エシカルやサステナビリティへの関心が高い。