東京メトロ沿線で見つけたことを、編集部が気ままに紹介する「気ままにメトロポリターナ」。5月号で登場した「木花之醸造所(このはなのじょうぞうじょ)」で、編集部一同その美味しさに感動したどぶろく。その醸造の工程について、前編・後編にわたって紹介します。
浅草/木花之醸造所
本誌5月号の特集「おうちでちょっといいお酒」では、いつもの家のみがワンランクアップする、とっておきのお酒の楽しみ方を紹介しました。こちらで登場した「木花之醸造所」のどぶろくづくりへのこだわりに、取材班は大興奮! ということで、今回は本誌で紹介しきれなかった醸造の様子を、たっぷりとお届けします。取材当時の「木花之醸造所」の醸造長・岡住修兵(おかずみ しゅうへい)さんに、詳しくお話を伺いました。(6月1日から、日向勇人醸造長が新たに就任)

どぶろくづくりには、米と水と麹が欠かせません。一般的に酒づくりに使われる米は、米の表皮に含まれるタンパク質や油分を取り除くために、40パーセントほど磨いて使われます。磨くことで出る米糠や米粉は、再利用されずに捨てられてしまうことも。「米を余すことなく使い、美味しいお酒をつくりたい」という岡住さんの思いから、木花之醸造所では、食卓に並ぶ白米と同じ精米歩合(精米して残った米の割合)90パーセントの米を使い、どぶろくをつくっています。
精米された米は、「洗米」、「浸漬」、「蒸米」という処理が施されます。こうした一つひとつの処理も、美味しいお酒をつくるうえでとても大事。洗米では、米を炊飯前に研ぐのと同じように、白米についている糠(ぬか)を水で洗い流します。浸漬は、米に適量の水分を含ませるのですが、米の種類や精米歩合によって浸す時間が変わるため、その見極めが肝心です。そして、「甑(こしき)」と呼ばれる蒸し器で米を蒸し、麹づくりの工程へと進みます。

酒づくりには、米に含まれるデンプンを糖化させ、その糖分をアルコールに変える工程が必要。デンプンはそのままアルコールに変えられないため、糖化させるための麹づくりも大切です。木花之醸造所が麹づくりに使うのは、種麹メーカー「秋田今野商店」が1943年の創業当初からもっている種麹「焼酎用黄麹菌」。焼酎用とされていますが、清酒や味噌などにも使える万能な菌で、米を溶かす力の強さが特徴です。この菌を使う理由には、使っている米の精米歩合にあります。
木花之醸造所で使われる米は精米歩合が高いため、麹づくりの際に米が溶けにくいという難点が。そこで、米をしっかりと溶かす力をもつ「焼酎用黄麹菌」を使えば、きちんと麹をつくることができるのです。麹を仕上げるのにかかる時間は、一般的な麹づくりよりも短い40時間弱。その理由について、岡住さんは「強い種麹を使って通常の時間でつくると、濃くてくどい味わいになってしまいます。上品な甘さを出すために、時間を調整しています」と話してくれました。

いかがでしたか? 岡住さんによると、素材選びから瓶詰めまで、一つひとつの工程の少しの違いで、お酒の味わいはまったく異なるそうです。美味しくなる無限の可能性を秘めたお酒。飲むだけでなく、その醸造の工程を知ることで、お酒の楽しみ方は何倍にも広がりますね。次回は、「酒母」「仕込み」の工程について紹介していきます。こちらも、美味しいどぶろくを追求した岡住さんのこだわりが満載です。後編もどうぞお楽しみに!
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