世界各地で創作を続ける16名の女性アーティスト。その全員が、なんとキャリア50年を超える70歳以上!彼女たちのエネルギーが詰まった展覧会が開催中だ。
Miriam Cahn
それが一体何なのかを知らずに、
作品を観ることができなくてはなりません。
アートはすべての人にとって、
言葉を介さず理解されるべきなのです。

右から
《厳格な鳥》2019年10月27日 Courtesy: WAKO WORKS OF ART, Tokyo
《5分絵画》2018年11月1日 Courtesy: WAKO WORKS OF ART, Tokyo
《無題》1999年12月29日 所蔵:OKETA COLLECTION(東京)
《無題》2012年10月1日 所蔵:白木 聡、鎌田道世
ナチス・ドイツの迫害から逃れるため、ドイツとフランスからスイスに亡命したユダヤ人の家族の下、バーゼルで生まれ育ったミリアム・カーン。作品のテーマは彼女のアイデンティティに深く関わり、差別や暴力、戦争、難民問題などが、力強いドローイングや色彩豊かな油彩として昇華されている。1970年代には、女性解放運動の団体にも参加していたが、のちに脱退。その理由は、女性であることを意識しながらも、性差を超えた地点での創作活動に意識を向けたからだという。森羅万象について、あらゆる次元において平等性を貫き、テーマとして取り組む彼女の芸術は、融和や寛容よりも批判や分断が広がる今日の世界に、より輝きを放っている。
Profile
1968年から1973年までバーゼル芸術専門学校で学び、1977年にバーゼルの主要な文化施設、シュタンパで初の個展を開催。2019年にスイスのベルン美術館、ドイツのハウス・デア・クンスト、ポーランドのワルシャワ近代美術館の3館を巡回する大規模個展を開催。
Anna Boghiguian
芸術とは、私の中にある何かです。
それは自分自身への、そして人生への好奇心です。

《シルクロード》(部分)2021年
カイロを拠点に、世界各地を訪れ、その土地の歴史や政治、世界状況などをリサーチした結果を題材に作品を制作するアンナ・ボギギアン。今回が日本で初めての作品発表となる。抽象絵画から始まり、塩、蝋、木材、金属、綿などの多様な素材を組み合わせるダイナミックな表現を特徴とし、近年では、出展作品のようなドローイングを切り抜いた紙人形劇のようなインスタレーションを発表している。この新作のテーマは、日本の絹産業の歴史。シルクロードにはじまり、明治期の日本経済に繁栄をもたらした養蚕業や製糸業の発展と労働者の悲哀、そして、日本初の動力織機を完成させた豊田自動織機がトヨタ自動車へと発展するまでの壮大なストーリーが描かれている。
Profile
アルメニア系の両親の下、エジプトのカイロに生まれる。カイロのアメリカン大学で哲学と政治学を学んだのち、カナダのモントリオールにあるコンコーディア大学で美術と音楽を学んだ。ドクメンタ13(2012年)、第56回べネチア・ビエンナーレ アルメニア館(2015年)などの国際展、ニューヨークのニュー・ミュージアムはじめ、欧米の主要美術館で個展を開催。
Nunung WS
私は何かを吐き出したい。
話すのではなく。
私の頭のなかの、
心のなかの何かを。

正面右から《織物の次元 2番》2019年、《門》2011年、《Verzon 2番》2020年
ヌヌンWSの作品は、限られた色彩と線と短形で構成された抽象絵画。作品を通して色彩表現の無限の可能性を探求している。インスピレーションの源泉は、ジャワ島の日常や建築、自然環境。その背景には、寺院や地域の風習、伝統工芸に関する独自の研究があるという。本展で隣に展示されているカルメン・ヘレラが先鞭をつけた欧米のミニマリズムとは異なり、モチーフの色彩を導入として、豊かな情感や深い精神世界を描いているところに独自性がある。偶像崇拝を禁じるイスラム教の価値観を守りながら、自身が観て感じた情景や感覚を抽象絵画で表現してきた。絵画を描くことを「スピリチュアルな旅路」という彼女の作品からは、未来を明るく照らすエネルギーが受け取れるだろう。
Profile
敬虔なイスラム教徒の家庭に生まれ、幼い頃からスポーツや厳格な宗教儀式を日々実践したことが強い自立心を育み、高校卒業の頃からアーティストになることを決意し、スラバヤ美術アカデミーで学んだ。1970年代からインドネシア国内で数々の展覧会に出品し、90年代からはヨーロッパでの展覧会にも参加している。
Information
アナザーエナジー展:
挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人
会期:9月26日(日)まで開催中
開館時間:10:00〜20:00(最終入館19:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館16:30)
※当面時間を短縮して営業。最新情報はWebサイトにてご確認ください
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
出展アーティスト:エテル・アドナン、フィリダ・バーロウ、アンナ・ボギギアン、ミリアム・カーン、リリ・デュジュリー、アンナ・ベラ・ガイゲル、ベアトリス・ゴンザレス、カルメン・ヘレラ、
キム・スンギ、スザンヌ・レイシー、三島喜美代、宮本和子、センガ・ネングディ、ヌヌンWS、アルピタ・シン、ロビン・ホワイト
便利で安心な森美術館のオンラインチケットシステム
森美術館に行くなら、この春から新たに導入されたチケットシステムを活用しよう。専用オンラインサイトや「ヒルズアプリ」からチケットを事前購入すれば、QRコード認証でスムーズにダイレクト・イン入館ができる。また、美術館入り口には無人券売機も設置。キャッシュレスにも対応し、非対面、非接触の安心して鑑賞できる環境になっている。
専用オンラインサイト
https://visit.mam-tcv-macg-hills.com
ヒルズアプリ
https://preview.page.link/hillsapp.page.link/app_installer
※スマートフォンでアクセスしてください。