一人ひとりのウェルビーイングの実現に向けて、国が女性の健康課題を解決する「フェムテックの推進」に乗り出している。その背景とともに、フェムテックの可能性について、経済産業省・経済社会政策室の春口浩子さんに話を聞いた。
フェムテックの推進で
多様な働き方とウェルビーイングを目指す
昨年6月、閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」。ここには、女性が輝く社会の実現のために、さまざまな政策が掲げられている。そのひとつとして、経済産業省では「フェムテックの推進」に取り組んでいる。目的は、女性の健康課題が、キャリアにおよぼす影響の改善だ。たとえば女性には、生理(月経)による仕事のパフォーマンスの低下や、妊活や出産のために仕事を諦めざるをえないといった場合がある。そのような現実を改善し、すべての人が健康で幸せな日々を送るために、フェムテックを活用するというのが、経産省の狙いだ。しかも、この施策が目指しているのは、必ずしも女性だけのメリットではないと経済産業政策局の春口浩子さんは話す。
「女性が直面するライフイベントや健康課題は、女性だけの問題ではありません。周りの人が理解して支え合うことから、職場のマネジメントが改善するだけでなく、多様な働き方を受け入れることにつながっていきます。フェムテックを通じて女性の健康課題をサポートし、誰もが働きやすい環境に整えることを目指しています」
では、具体的にどのような取り組みが行われているのか。経産省が昨年から実施を始めたのが「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」。これは、フェムテック製品やサービスを提供する企業や医療機関、自治体に向けて、事業費の3分の2(上限500万円)を補助するというもの。今年度は、対象となる20の企業・団体が実証事業に踏み出した。具体例を挙げると、シャープによる生理用品の在庫管理と生理周期を自動記録してくれる「IoT収納ケース」といったサービスの提供や、ウェルネスサポートLabによる、看護師がオンラインで不調や悩みの相談に対応する「フレンドナース」サービスなど、さまざまなフィールドにアプローチを行う事業ばかりだ。
経産省の補助事業は、来年度も引き続き実施していくという。さらに裾野を広げていくために、今年度の事業者の成果を広く発信していきながら、地域や自治体との連携も目指していきたいと、春口さんは続ける。
「ライフイベントや生活環境にフィットしたサポートを行っていくためには、地域や自治体からのアプローチも欠かせません。多くの女性の悩みをより軽減・解消し、その理解を広げていくために、企業だけでなく自治体との連携を積極的に図っていきたいと思っています」
経済産業省 経済社会政策室
春口 浩子さん
フェムテック等サポートサービス
実証事業費補助金
経済産業省が実施している「フェムテックの推進」では、フェムテックを活用し、働く女性の妊娠・出産などのライフイベントと仕事の両立、女性特有の健康課題解決により、働く女性が能力を最大限発揮し、いきいきと活躍することを目指す事業に対し、その経費の一部を補助している。
フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金
第一期の事業例
《シャープ》
IoT収納ケースとアプリを連携させた月経周期記録&生理用品の在庫管理サービス
IoT収納ケースに収納した生理用品を使用するだけで自動的に月経周期が記録されるので、忙しい日々の中でも記録の手間を軽減できる。アプリから生理用品の在庫も確認でき、生理用品の買い忘れも防げる。
《一般財団法人 ウェルネスサポートLab》
女性特有の心身の不調をかかりつけナースに相談できるオンライン窓口
福岡市在住の働く女性に向けた、オンラインのかかりつけナース(フレンドナース)事業。地方女性のリアルなニーズを理解し、地域社会に向けた啓蒙啓発を目的として、一般的な健康問題やデリケートな女性特有の不調の軽減を行う。
経済産業省によるフェムテック推進に関する特設ページ
https://www.femtech-projects.jp
経産省によるフェムテック推進の公式ページでは、第一期にあたる20の企業・団体の事業の内容から、これまでの調査結果、活動報告を見ることができる。