新しい時代をいかに生きるか?
ウェルビーイングについて16作家の作品から考える
地球規模のパンデミックに見舞われているいま、世界はどうなるのか、そのなかでどう生きるのかを、改めて考えるきっかけになる展覧会が、六本木ヒルズの森美術館で開催中。16名の作家の作品に触れれば、自ずと自分への問いかけが、始まるはず。
Montien Boonma
薬草の香りに包まれて胸いっぱいに深呼吸を
タイ・チェンマイを拠点に、心理療法としての美術のあり方や上座部仏教の教えを中心とした精神世界などをベースに作品制作を続けたモンティエン・ブンマー。出品作は、タイの伝統医学で用いられる薬草を塗布した金属製の箱を積み重ねたもの。箱の内部にも薬草が置かれ、香りを放っている。上部に吊り下げられた肺の模型の下で深呼吸を繰り返すと感覚が研ぎ澄まされ、身体にかかる重力によって地球に存在する自分自身を意識することができる。作品タイトルは、“無病の家”を意味する造語。
Sumi Kanazawa
新聞紙と鉛筆が生み出す無限の宇宙空間
広い空間を覆い尽くす、金沢寿美の大作。まるで宇宙空間を漂うかのような浮遊感が味わえるこの作品は、10Bの鉛筆で新聞紙を塗りつぶし、つなげたものだ。鉛筆の芯の黒鉛(グラファイト)が艶を放つ漆黒の闇のなかで星雲のように光る模様は、近づくと「マスク」「ウクライナ」などの言葉や写真だということがわかる。新聞を広げて日々ニュースを俯瞰する金沢の目に止まり、塗り残された部分だ。その言葉や写真を目で追うと、遠目に見る時とはまったく異なる、個人と社会との結びつきが浮かび上がる。
《自然の呼吸:アロカヤサラ》1995年
所蔵:DCコレクション(チェンマイ)
《新聞紙のドローイング》2022年
Tsai Charwei
曼荼羅の前に立ち宇宙を想像する
ツァイ・チャウエイは、東洋思想に基づいた宇宙観や自然観に対する研究と洞察をもとにしながら、個人的かつ詩的なアプローチで作品を制作する。本展では、中国の莫高窟やモンゴル、日本の高野山などを訪れてリサーチを行った作品を展示している。《子宮とダイヤモンド》は、密教において最も重要とされる両界曼荼羅を、鏡とガラス、ダイヤモンドで制作。不滅の力を表す金剛界では、大日如来をダイヤモンドで、すべてを包み込む空間を表す胎蔵界では、ブータンの僧侶がマントラを唱えながら吹いたガラスの彫刻によって表現している。
手前 《子宮とダイヤモンド》(部分)2021年
奥 「5人の空のダンサー」シリーズ(部分)2021年
所蔵:リブ・フォーエバー財団(台中)
《INFORMATION》
地球がまわる音を聴く:
パンデミック以降のウェルビーイング
11月6日(日)まで開催中!
開館時間:10:00〜22:00(火曜日のみ17:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで。会期中無休
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
《ARTIST》
エレン・アルトフェスト/青野文昭/モンティエン・ブンマー/ロベール・クートラス/堀尾昭子/堀尾貞治/飯山由貴/金崎将司/金沢寿美/小泉明郎/ヴォルフガング・ライプ/ゾーイ・レナード /内藤正敏/オノ・ヨーコ/ツァイ・チャウエイ(蔡佳葳)/ギド・ファン・デア・ウェルヴェ
《TICKET》
チケットは事前予約制
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