水曜夜の深呼吸《音楽日々帖》


 一週間を折り返す夜に、癒しとパワーをもらえる音楽をご紹介します。

 ジョルジャ・スミスの『Be Right Back』は、パンデミック下で多くの人が経験したであろう、別れやすれ違い、コミュニケーションの歪みなどを綴ったミドルテンポなEPです。「誰も傷つかなくていい」というフレーズが印象的な「Burn」は、出口の見えない戦いをしている人に寄り添う歌。柔らかなギターとミニマムなドラムの組み合わせはライブ演奏のフィーリングに近く、揺らぐような彼女のボーカルが引き立つ1曲です。

 エリカ・ド・カシエールの『Sensational』は、スムースでちょっとラテンの香り、そしてウィスパー系ボーカルが夏の時期に心地いい1枚です。デスティニーズ・チャイルド、ジェニファー・ロペス、アリーヤなど、ミレニアム感あるディーバが頭をよぎるR&Bサウンドは、絶妙に懐かしい! 独立心の強い女性が思い浮かぶ歌詞が多く、私は、デスチャが歌った「Independent Women」たちの20年後の姿かも?と妄想を膨らませながら聴いています。

 そして米国レーベルからもリリースされたCHAIの『WINK』。アメリカに住んでいると否応なく自分の人種を意識せざるを得ないのですが、アジアの女の子がさらりと「ホクロはチョコチップかもね」と歌うの、ものすごくキラーじゃない?と勇気付けられました。ありのままの自分を認められたなら、それだけであなたは素晴らしい。自己愛に溢れたメッセージを、ステレオタイプにまみれたピンク色の服を纏って発信する彼女たちは、性別も人種も超えてたくさんの背中を押すはずです。

JORJA SMITH『Be Right Back』

 デビュー作が、マーキュリー賞やグラミー賞にもノミネートされたイギリスのシンガーソングライター。本人がいま届けたかったという感情的で想像力豊かな8曲を収録したEP

metro221_metroradio_1.jpgFAMM 2021

ERIKA DE CASIER『Sensational』

 ポルトガル出身、デンマークのコペンハーゲンを拠点に活動するシンガーの、4AD移籍後初となるオリジナルアルバム。本人が多忙な経営者を演じる「Busy」のMVも必見

metro221_metroradio_2.jpg4AD 2021

CHAI『WINK』

 名古屋出身の4人組による3rdアルバム。J-POPらしさを捨てずに海外でもクールに鳴る音に仕上げ、女子のステレオタイプを崩さずカワイイの概念を更新した強かさに拍手

metro221_metroradio_3.jpgOTEMOYAN record 2021






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