名盤続々フォーク系アルバム《音楽日々帖》


 2021年も、フォーク界隈からよい風が吹いています。

 まずはカサンドラ・ジェンキンスの新作。4人の人物が、海はすべてを癒やしてくれる、とアドバイスする「NewBikini」や、こちらも4人の人物との会話を軸に苦悶の日々から抜け出そうとする過程を描いた「HardDrive」など、音の美しさに加えルポルタージュ的な構成も知的です。喪失と癒やしがテーマと聞いて「喪失体験を誰かに聞いてもらい、逆に最悪な記憶を話してもらうことで痛みを癒やす」ことを試みたソフィ・カルのアートを思い出しましたが、圧倒的に苦しみが勝ったソフィの作品と比べ、カサンドラのアルバムは癒やしに向かう方にスポットが当たっており、そこも救われた気持ちになりました。

 次にザ・ウェザー・ステーションの『Ignorance』。ハイファイで颯爽としたサウンドへと変貌を遂げ、まるでジャズ路線に舵を切った頃のジョニ・ミッチェルかのようなブレイクスルーを果たしています。ドラムビートが疾走する爽快感の反面、世界を着心地の悪い服にたとえた「Wear」など、歌詞の裏側には気候変動に対する強い危機感が隠されているのが示唆的。二面性にあっと言わされる作品です。

 ワイルド・ピンクの新作は、ペダルギターやフィドルといったフォーク/アメリカーナの伝統と、オートチューンやドラムループのような現代の音づくりが融合したロックアルバム。スケールの雄大さはブルース・スプリングスティーンのようでもあり、ドリームポップのようでもあり。進化と深化を遂げるフォークサウンドから、まだまだ目が離せません!

 

CASSANDRA JENKINS『An Overview on Phenomenal Nature』

ニューヨーク出身のシンガーソングライターによる2作目。喪失と癒やしをテーマに、有機的に重なる繊細なサウンドと艶やかなサックスの音色が美しいアンビエントフォーク作品
metro218_music_01.jpg2021 Ba Da Bing

 

THE WEATHER STATION『Ignorance』

タマラ・ホープの名で俳優としても活躍するカナダのシンガーソングライター、タマラ・リンデマン率いるフォークバンド。ミステリアスなAORのようなサウンドが爽快な5作目

metro218_music_02.jpg2021 Fat Possum Records

 

WILD PINK『A Billion Little Lights』

ニューヨークで結成されたインディーロックバンドの力強くも優しい3作目。トラックが稜線のようにつながっていて心地良いので、ぜひアルバム通して聴いてください!


metro218_music_03.jpg2021 Royal Mountain






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