誰かと熱い議論を交わした夜。大きな仕事を終えた帰り道。さっき見た映画の興奮が冷めない…。
今月は、余韻を引きずって気分が高揚したままの夜につきあってくれそうな音楽を選びました。
マイルドハイクラブの『Going Going Gone』は心地いい夜のBGMにぴったり。たとえるなら、おしゃれなラウンジで3杯目のカクテルを嗜んでいるときの、ほろ酔いフィーリングッドな感じ。ソフトロックのサウンドが溶け込んだ「Dionysian State」など、取り合わせの妙に膝を打ったサイケポップ作品です。
バーニスの『Eau De Bonjourno』は、心の感度が高まっているときにこそ楽しめそうな、ミニマルモダンな音楽です。静謐な空間にオブジェのように配置されたユニークな質感の音が、思わぬ場所から聞こえる面白さ。「Personal Bubble」は、癒やしとグルーヴのバランスが絶妙なヒーリング・ダンスミュージックです。
最後は、ジョーダン・ラカイの『What We Call Life』。あれこれ思考が止まらなくなって冴えてしまった夜の脳内は、こんな感じではないでしょうか。自身の内面という極めて閉鎖的な世界をダイナミックに引っ張り出したアルバムで、緊張と高揚がないまぜになって押し寄せる「CloudsとBrace」は必聴です。内省的な作品の多くは繊細な方向に行きがちなところ、ウィークエンドやワンオートリックス・ポイント・ネヴァーを思わせるマッシブなシンセでつくり上げる勇敢さが素敵。
あなたの夜にフィットする曲が見つかればうれしいです。
MILD HIGH CLUB『Going Going Gone』
LAのマルチミュージシャン、アレクサンダー・ブレッティンによるプロジェクト。ジャズ、AOR、ブラジル、シティポップなどが緩やかに溶け合うヴィンテージ&サイケポップなアルバム
BERNICE『Eau De Bonjourno』
トロントのジャズの素養を持つ5人によるエクスペリメンタルポップ・バンド。シルキーなハーモニーとクリアなエレクトロ~アンビエントサウンドが浮遊する実験的な3rdアルバム
JORDAN RAKEI『What We Call Life』
ロンドンを拠点に活動するマルチインストゥルメンタリスト。自身の家族や出自に思いを巡らせた内省的な作品。従来のネオソウルを踏まえつつより豊潤で幅広い音表現に踏み出した4作目