重要なことを伝える時は低いトーンで小さな声の方が伝わる、とはタモリさんの言葉だといわれているけれど、最近、抑制の利いたクールな歌声に耳を奪われることが多くて、音楽を聴きながら「その通りだなぁ」とうなずいております。
ハンド・ハビッツの「Aquamarine」は、アルバム『Fun House』でも異色を放つエレポップ。ダンサブルなアレンジと対照的な、悲しみややさしさや冷酷さが入り混じったような低い歌声に心酔し、こればかり聴いていた時期がありました。のちのインタビューで、4歳のときに経験した母の死と向き合った歌で、アクアマリンは形見だということを知り、今年とくに印象に残っている曲です。
パク・へジンの『Before I Die』は、低血圧気味のクールなラップと、多彩なクラブサウンドの融合が絶妙。英語と韓国語で語られるのは、家族を恋しく思う気持ちや、自分への「おつかれ」だったり、理不尽さへの反骨心など。作品全体に「気だるい日常と、その逃避先としての音楽」という雰囲気があって、グロサリーストアで働く少年が踊り出す「Let’s Sing Let’s Dance」のMVには元気をもらいました。
マグダレーナ・ベイの『Mercurial World』は、マイカの“はかなカワイイ”ボーカルと、どぎついシンセサウンドの組みあわせが中毒的。同じくタイトル曲にMaterial Worldを引用しているマドンナや、グライムス、チャーチズっぽくもあり、でも元々プログレバンドだった(!)片鱗も覗かせ、極彩色な世界にトリップしたかのようです。
魅力的な歌声、ぜひイヤホンやヘッドホンで聴いてみてください!
HAND HABITS『Fun House』
ケビン・モービーなどのサポートとしても活躍するLA拠点のSSW/ギタリスト、メグ・ダフィーによるプロジェクト。アルバムプロデュースはササミ・アシュワース
PARK HYE JIN『Before I Die』
ソウル出身、メルボルンとロンドンでの暮らしを経て、現在LAを拠点とするラッパー/シンガー/DJ/プロデューサーによる初フルアルバム。イェジ(Yaeji)好きはマストチェック
MAGDALENA BAY『Mercurial World』
LA発のエレクトロポップ・デュオによる、どこか懐かしいディスコを融合したデビューアルバム。独特の世界観はインターネットの海に置き去りにされたユートピアのよう
LUMINELLE RECORDINGS 2021