冬のよき日に《音楽日々帖》


 アメリカでは、「よい1日を」 「ありがとう、あなたも」とあいさつする習慣があります。レジで店員さんと。エレベーターで乗り合わせた人と、1日に何度も言っているうちに、今日も悪くないなと思えてくるから不思議です。いい日って、案外そんなものなのかもしれません。

 愛する人を一目見ただけで素敵な日になる予感がすると歌うのは、ビル・ウィザース。私はラジオから流れてくる「Lovely Day」が大好きです。あのイントロが聴こえたとたん、素敵な1日を過ごしているような気分になるんですよね。

 白いアルバムジャケットと名前のイメージから、冬に聴きたくなるフィービ・スノウ。彼女の爪弾くアコギと軽やかな節回しにすっと引き込まれます。「Harpo’s Blues」は、テディ・ウィルソンの優雅なジャズピアノが華を添える曲。3連符のドラマチックな転調でいつも、雪がちらついてきたときに街がきらめいて見える瞬間を思い出します。

 日差しの中で聴くと多幸感に包まれるのが、ハウディの『True Love』。一進一退の2年を経て、シンプルにこんな温かな音楽が身に沁みます。過去の記憶とノイズエフェクトが呼応しあい、アコースティックサウンドが包容力たっぷりに受け止める。わき起こる感情をどう消化するのか、あるいは消化させないままどう今日の豊かさに換えていくか。美しいリフレインに身を委ねながら、そんなことを考えました。

 ハレの日でも、なにげない日でも、寒い冬の今日が「よき日」でありますように。

BILL WITHERS『Menagerie』

 近年では「Lean On Me」がパンデミック下のアンセムとして再注目。70年代に、いまなお愛される名曲を生み出したアメリカソウル界のレジェンド。ジャケットの笑顔が素敵

metro228_metroradio_1.jpg1977 SONY MUSIC(配信版)

PHOEBE SNOW『Phoebe Snow』

 NY生まれのシンガーソングライター/ギタリスト。ジャズ、ブルース、フォークを織り交ぜた音楽性と4オクターブのダイナミックな歌声に心揺さぶられるデビュー作

metro228_metroradio_2.jpg1995 THE RIGHT STUFF

HOVVDY『True Love』

 テキサス出身のインディーポップ・デュオによる、さまざまな愛の歌が詰まった4作目。ビッグ・シーフやボン・イヴェールの作品を手がけたアンドリュー・サーロが共同プロデュース

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2021 TUGBOAT RECORDS






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