サウンド・カレイドスコープ《音楽日々帖》


 街も自然もファッションも、彩り豊かになる春。さまざまな色合いや質感が楽しい音楽をセレクトしました。

 USインディー界の万華鏡こと、アニマル・コレクティヴが久々のカムバック。プリミティヴな打楽器の音が散りばめられ、有機的に絡みあう演奏へと変化した『Time Skiffs』は、身を委ねていて心地のいい作品です。日没のようでもあり日の出のようでもあるラスト曲の「Royal and Desire」を聴き終えたとき、後味のいい夢から覚めた気分になります。

 美しいメロディラインと音のコラージュでユーフォリックな情景を描き出すテニスン。新作『Rot』は、ジェイムス・ブレイクを思わせるサッドなボーカルと、意外性のある音が飛び出すフォークトロニカが融合し、ポップとアートのせめぎあいがたまりません。高揚感のあるビートがティコを彷彿とさせる「Iron」、バンジョーやインド楽器らしき音が温和な空気感を醸し出す「Leaves」は必聴です。

 柔らかなアースカラーの中にも、微細な質感や色合いの違いがあるもの。ビッグ・シーフの最新作は、全米5カ所でそれぞれ異なるエンジニアと収録され、彼らの表現の多様性を印象づける大作となっています。カリフォルニアで鳴らす実験室のような音(Time Escapingなど)、アリゾナで奏でる古き良きカントリーが薫る音(Spud Infinityなど)、ロッキー山脈の神秘的で清澄な音(No Reasonなど)、マサチューセッツのパーソナルな音(Promise Is a Pendulum)、そしてNYの温かく親密な音(12,000 Linesなど)。それぞれのテロワールを味わうように聴き進めるのも一興ですよ。

ANIMAL COLLECTIVE『Time Skiffs』

 結成から20年を超えてなお進化を続けるサイケデリック・バンドの6年ぶりのスタジオアルバム。時間とは悠久の歴史であり、ときに春の夜の夢のように儚いものなのかも

metro230_metroradio_1.jpg2022 DOMINO

TENNYSON『Rot』

 カナダのルーク・プリティによるエレクトロ・プロジェクト。突発性難聴と向きあう過程で制作され、ダイナミックにボーカル表現の新境地に挑んだ初のフルアルバム

metro230_metroradio_2.jpg2022 COUNTER RECORDS

BIG THIEF『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』

 全20曲を収録した5作目。プロデュースはエンジニア経験もあるドラムのジェームズ・クリヴチェニア。彼のドラムの音こそ、ビッグ・シーフらしさの要だと密かに思ってます

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2022 4AD






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