illustration: Yu Fukagawa text: 千代里

色気のあるしゃべり方《お多福美人講座》


 色気の正体が、「恵みを受け取り、喜び、味わう心」ということに気づいたと、この連載で以前書きました。かつては花柳界を誤解されたくない、という気持ちが強すぎて、色気という言葉を目の敵にしていたのです。今では、色気の大切さがわかり、80歳でも会話で周りにいる人をキュンとさせる女性に接すると、私もそんなふうになりたいと思います。付け焼き刃で真似をすると、すぐにボロが出て、必死感が漂うのですが…(笑)。

 「自分の言いたいことを言おうと夢中になり、相手の話にかぶせてしまうことがある」「きちんと答えないといけない、と肩に力が入っている」「相手の想像力や経験に委ねようとしない」というふうになりがちな私は、「誤解されないように」「聞かれたことには全力で答えるべし」という義務感や、べき論で会話をしてしまっているのです。それとは対照的に、色気のある人は、会話を楽しみ、相手の存在や言葉を受け取り、味わうという姿勢を感じます。相手の話に耳を傾け、話を最後まで聞き、心地いいトーンとリズムでリラックスして話す。相手にもっと聞きたいと思わせるくらいにとどめたり、想像をかきたてる余白をつくり、独りよがりで会話を進めることがありません。無理に会話の舵取りをしようとせず、どこに会話が運ばれていくのかを楽しむことができるのは、相手に委ねたり、相手を信じたりすることができるからだと思います。

 色っぽい女性がよく言う、「あら、それはどうかしら。うふふ」というセリフには、そういう要素が満載!相手の質問に完璧に答えるより、質問自体を楽しむ。相手に想像の余地を与える。答えたくないことは、上手にかわす。相手と意見が違うときには、やんわりとそれを伝える、などなど。かつて使ったことのないこのセリフ、いずれは使いこなせるようになりたいものです。
 

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