「出会う人はみんな味方」。そんなふうに思っていたら、それが現実になると感じはじめたのは子供の頃でした。大人が集まるときなどは、「いつもこの人は悪口を言っているから、気をつけてしゃべろう」とか、「この人は近づいても大丈夫」とか、それまでの独自データをもとに身の安全を守っていたのですが(笑)、はじめて出会う人に限っては、「気があえば友達になれるかも」と、すれ違う人にかたっぱしから挨拶をしていました。あるとき、気難しいと評判のおじいさんとは知らぬまま挨拶したら、そのおじいさんの優しいこと。あとから、みんなに怖がられていると聞いて、「あのおじいさんは、自分を怖がる人の前では、優しい面を出しにくいんだろうな」と思いました。「人はこちらが決めたような人になる」と感じた印象深い出来事でした。
大人になるにつれて、そう感じていたことを忘れ、相手の気質や態度によって自分の接し方を変えるようになり、「ちょっと苦手だな」とか、「嫌いなタイプかも」と思ったときに、その気持ちのまま“敵モード”で接して、失敗することがたびたびありました。
「まず最初にその人を〝味方〞と決めて、自分の心を開く。するとそれを感じた相手もこちらを“味方”と感じてくれて、最終的にはかけがえのない人になることもある」。言葉にすればこれだけのことですが、日々これを実践するのは大変です。場合によってはわざわざ近づく必要のないこともあるものの、ふとしたときにこの考え方を思い出し、やってみて、「本当に良かった」と思ったことがいままでに何度あったかわかりません。また、うっかりやってしまいがちなのは、敵でもない人を最初から敵に仕立て上げてしまうこと。まずは自分の心のなかから敵を減らし、味方をふやすことが、味方をつくるいちばんの方法なのだと感じています。