illustration: Yu Fukagawa text: 千代里

【最終回】「思い込み」を書き換える《お多福美人講座》


 芸者だった頃、「私はいつも人から助けてもらえる」と思いこんでいる同期がいました。その彼女が、ほぼ八つ当たりでお姉さんに怒られたことを、「私を成長させるため」と言ったときには、おめでたすぎると思ったものです。ところが、そこに含まれる「わずかな(笑)導き」を生かして同期は成長し、お姉さんの八つ当たりさえ、「自分を助けてくれるもの」だと示してみせました。人は、さまざまな出来事を、思い込みを裏付ける根拠とし、その観念にあわせて行動します。同期の思い込みがあれば、人からのちょっとした悪意は優しさに変換され、好意を疑わず、頼みごとが苦もなくできるようになるのだと羨ましく思ったものでした。

 また、「愛されるかどうかは見た目次第」と考える人は多いですが、それも単なる思い込み。同じような体型のお姉さん二人が、それぞれ「私はこの体型。だから人気がある」、「私はこの体型。だから好かれない」と信じ、そのとおりに、人気があったりなかったりするのを見て、見た目ではなく、自分が自分をどう思うかで、人への接し方や展開が変わり、その“思い込み”こそが現実をつくるのだと感じてきました。

 それならば、いつでも「私は能力がある、運がいい、幸せ…」と思いたいところですが、それは私にとってはむずかしく(これも思い込みかも!笑)、気づけば「ダメな自分」という観念に沿った証拠ばかり集めてしまいます。自分を幸せにしない思い込みを書き換えるには、地味な作業ながら、その観念が間違っているという証拠(自分に与えられている恵みや豊かさ)を、ひとつひとつ集めて、受け取っていくことが大切。アラや不幸を探して、やっぱりダメだと思う代わりに、小さくても自分のいいところ、幸せなところを探して、「私は本当に幸せ者」と思い込んで生きていきたいものです。

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「お多福美人講座」は、今回で最終回。読んだくださる方を思い浮かべる豊かな時間でした。
またお目にかかれる日を楽しみに。七年間の♡と感謝を込めて。 千代里






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