芸者になってはじめてお座敷に出る日のことです。お姉さんから、「途中からお座敷に入るときには、座って一礼してから入るのよ」とだけ言われて送りだされそうになり、とてもあわてました。私としては、「この位置で、この角度で、こうやってお辞儀をして…」と、細かく指導されるものと思っていたので、どうやっていいのか見当もつかず、不安でいっぱい。そのことをお姉さんに言うと、「口であれこれ言ってもどうせわからないわよ。その場でほかのお姉さんがしていることをよく見て、やりながら覚えなさい」とのこと。実際にお座敷では、細かい決まりをお姉さん方から教わったのですが、聞いてもすぐにはできませんでした。何度も、何日も失敗しながら繰り返すことで、やっと頭で考えなくてもできるようになっていきました。
人は、「失敗したらどうしよう」、「みっともない姿をさらすかも…」、「完璧じゃないと批判される」と思うと怖くて、挑戦するのをやめたり、完璧になるまでスタートできないこともありますが、人の命を預かるような仕事以外は、まずは何度もやってみて、失敗もして、そこから学ぶつもりでいたほうが、身につくのも早い気がします。
また、自分に対してだけでなく、子育て、人育ての場面では、「自分と同じ失敗をしてほしくない」との思いから、失敗しないように先回りしてアドバイスしたり手伝ったりすることがあります。でも、自分も失敗したからこそ身についたことがあることを思うと、失敗しないような手助けと同時に、失敗したときのフォローや支えのほか、「私も失敗したけど、ちゃんとそのあとも元気にやってるよ」という姿を見せることが大切だなぁと感じます。「やってみなけりゃ始まらない。失敗しても大丈夫」という、おおらかなお姉さんの親心が身にしみるこの頃です。
