選手との信頼関係を壊さないために
Bリーグの熱い戦いの裏には、試合一つひとつを支える人々がいる。レフェリーとしてコートに立つ、加藤誉樹さんもその一人。プロバスケ選手としてコートに立つことに憧れた学生時代もあったが、けがなどの理由で断念。レフェリーに進路を変更した。平日は一般企業で働き、週末はトップリーグの審判を担当していたという時期もあったが、現在は日本バスケットボール協会(JBA)の公認プロフェッショナルレフェリーを務め、3季連続でBリーグの「最優秀審判」を受賞。プロとして着実に実績を積んでいる。そんな彼にレフェリーの心得を尋ねてみた。
「ただ正しい判定をしているだけでは、ゲームがスムーズに進まないことがあるんです。明らかな違反は、選手同士でもわかるので、僕らが必要になるのはどちらとも言えないグレーな部分。競技規則に則って、いかに自信をもって笛を吹けるかが重要です」
そのため試合の場面一つひとつを見逃さないことはもちろん、日ごろから心がけていることがある。
「身体を鍛え、コート上で不安を与えない見た目を保つこと、選手やコーチとのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を壊さないこと。そして判定の検証は常に行い、適切でない場合はそれを受け入れて修正していく。これこそが、ゲームを正しく前に進めるために重要だと思っています」
ただ、選手とは仲良くなりすぎない。フェアなジャッジのために、一定の距離を保つようにしているという。また、同じコートに立つレフェリー同士のコミュニケーションにも労を惜しまない。
「海外の試合に参加した場合、見ず知らずの外国のレフェリーとチームを組むことがほとんどです。一緒に笛を吹くので、まずはじめに名前を覚えないといけない。そんな時に、僕がよくやるのは『日本語であなたの名前を書いてプレゼントしたいから、正しい発音を教えて』と言って、ノートに一文字ずつ書くんです。そうすると、自分の手元にその人の名前の読みが残るし、写真に撮ってその文字を贈ることもできる。この方法だとお互い違和感なく打ち解けられます」
“試合を正しく進める” 。そのために、技術を磨き、心配りも忘れない。ストイックな姿勢に裏打ちされた説得力のある判定が、Bリーグをさらなる高みへと導いてくれるはずだ。
JBA公認プロレフェリー 加藤誉樹(かとう たかき)
1988年6月30日、愛知県安城市生まれ。国際バスケットボール連盟(FIBA)公認の国際審判。28歳の若さでBリーグ最優秀審判賞を受賞し、2017年から初のJBA公認プロフェッショナルレフェリーに就任。世界を舞台に活躍できる審判を目指す。