主題歌が輝く物語をつくりたかった
松居大悟監督による初のラブストーリー『ちょっと思い出しただけ』が、2月に公開される。2021年の7月26日から始まるこの物語は、1年ずつ過去の同じ日へとさかのぼりながら、恋人2人の6年間の日々を描いていく。主題歌は、ジム・ジャームッシュ監督の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て、クリープハイプの尾崎世界観が書き下ろした「ナイトオンザプラネット」。この曲を受けて、脚本を書き下ろしたという松居監督は、制作が始まった当時をこう振り返る。
「約2年前、このコロナ禍で尾崎くんが、どういう曲をつくったらいいのだろうと悩んだ末に出来たのが『ナイトオンザプラネット』です。そのとき、僕にこの曲でなにかやりたいと言ってくれて。曲を聞いて、映画の最後にこの曲が気持ちよく流れる長編映画をつくりたいと思い、脚本を書き始めました」
この時期、映画制作にもさまざまな制限があったが、監督はその逆境を逆手に取る脚本を書き上げた。
「主題歌の着想元となったジャームッシュの同名作品は、同じ時刻の世界各地で起こる出来事を描いています。『ちょっと思い出しただけ』は、この作品に影響を受けていますが、コロナ禍で東京近郊でしか撮影ができなかったこともあり、それなら“同じ日付の同じ場所”で起きた出来事を描いたらどうかと。恋人2人の6年間にわたる定点観測のようなものになったらいいなと思ったんです。こだわったシーンはたくさんありますが、映画を見て『最後の曲めっちゃいいじゃん!』と感じてくれれば、僕は本望です」
映画のラストシーンでは、尾崎が歌う「ナイトオンザプラネット」が、作品を包み込むように流れる。松居監督がひとつの楽曲に捧げた本作。ぜひ劇場で、物語を堪能してほしい。
まつい だいご
1985年11月2日、福岡県生まれ。慶應義塾大学在学中に劇団「ゴジゲン」を結成。舞台の演出を手がけるとともに、映画やドラマの監督として多彩な作品を発表している。『私たちのハァハァ』(2015)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で2冠を達成。『ちょっと思い出しただけ』は、第34回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞した。

『ちょっと思い出しただけ』
2月11日(金・祝)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本:松居大悟
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、大関れいか、屋敷裕政(ニューヨーク)、尾崎世界観
配給:東京テアトル