祖父や叔父も演じた役を引き継いで
5月10日に公開される劇場版『鬼平犯科帳 血闘』で、主人公の長谷川平蔵役を演じる松本幸四郎。原作は池波正太郎による時代小説で、過去に何度も映像化され、幸四郎の祖父・初代松本白鸚や叔父・中村吉右衛門らも平蔵役を演じてきた。なぜ本作は長きにわたって人々に愛されるのか。幸四郎はこう分析する。
「人間には一人ひとりの生き方があって、本当に紙一重で“悪”にもなるし、“善”にもなる。そういう人間ドラマが『鬼平犯科帳』には描かれていると思うんです。だからこそ、いつの時代も共感される作品なのではないでしょうか」
今作で思い入れのあるシーンを尋ねると「殺陣のシーンですね。特に最後のシーンは、感情が殺陣に乗っているなと思いました」と話す。ちなみに劇中に出てくる『芋酒』の味を聞くと「さすがに撮影では酒は入ってなかったですけど、プロがつくる芋の料理は本当においしくて。(原作者の)池波さんもあんなにおいしいとは思っていなかったのでは」と笑う。
長男の市川染五郎が、若き日の平蔵である長谷川銕三郎役を演じるのも見どころのひとつだ。
「冒頭、銕三郎から平蔵にスッと切り替わるシーンは、私も見ていてゾクッとしましたよ。彼へのアドバイスですか?『映画はほんの数秒、数十秒、数分ずつのワンカットの積み重ねで出来ている。監督やスタッフはその一瞬を見逃さずに拾ってくれるから、いろいろな表現の仕方をしてみたら』と言いました。これだけ職人の集まりの現場で芝居ができるなんて、本当に幸せなことですから。貴重な機会を与えてもらったと思います」
柄本明、中井貴一、北村有起哉ら実力派俳優陣の共演も見逃せない。幸四郎は観客に対するメッセージとして、「個性的なキャラクターをそれぞれ個性的な役者さんが演じています。色濃い人間ドラマや迫力ある殺陣をぜひ楽しんでいただきたいですね」と話していた。
まつもと こうしろう
1973年、東京都出身。二代目松本白鸚の長男。1978年、NHK大河ドラマ『黄金の日日』に子役で出演。翌年3月に歌舞伎座『侠客春雨傘』で三代目松本金太郎を襲名して初舞台。1981年10月に七代目市川染五郎を襲名。2005年には映画「阿修羅城の瞳」「蟬しぐれ」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞などを受賞。2018年に十代目松本幸四郎を襲名。2020年に日本芸術院賞を受賞。
© 「鬼平犯科帳 血闘」時代劇パートナーズ
劇場版「鬼平犯科帳 血闘」
5月10日(金)公開
原作:池波正太郎
監督:山下智彦
出演:松本幸四郎、市川染五郎、北村有起哉、柄本明 他