illustration: Haruka Toshimitsu text: Keiko Ageishi

喫煙者は、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)に注意!?《働くオンナの救Q箱》


 掌蹠膿疱症は、文字通り、手足に症状が出るため、日常生活に影響を及ぼしやすい病気です。喫煙者に多いともいわれています。その症状、治療方法とは?

Q1.掌蹠膿疱症とは、どんな病気?

 好発年齢は40代、50代です。手のひらや足の裏に、水疱や膿疱(のうほう)(膿のたまった小さな袋)が複数できて、炎症を起こします。手のひらでは母指球や小指球のふくらみ、中央部分の凹み部分に、足の裏では土踏まずや、かかとの縁に症状が表れることが多く、左右対称に表れるのが特徴です。初期には小さな水疱ができ、やがて水疱の中身が黄色に濁り、膿疱が増えていきます。痒みや腫れを伴い、日常生活に支障が出る場合もあります。

Q2.掌蹠膿疱症の原因とは?

 この病気のメカニズムは、解明されていません。喫煙者や、歯科金属アレルギーのある人が発症しやすいといわれていますが、それも要因のひとつでしかありません。扁桃炎や虫歯、副鼻腔炎や中耳炎など、体のどこかに細菌感染があると、病巣感染(原病巣とは離れた場所に症状が起きること)を起こして、過剰免疫反応として症状が表れると考えられています。膿疱に細菌は含まれず、人に感染することはありません。

Q3.放っておくのは、よくない?

 手のひらに症状が表れると目につきやすいため、すぐに受診する方がほとんどです。放置すると悪化してしまうので、早めの受診をおすすめします。膿疱は、瘡蓋(かさぶた)となって剥がれ落ちたあとも、繰り返し表れます。慢性化しやすく、繰り返すほどに皮膚が分厚くなり、ひび割れやすくなって、痒みや痛みも強くなっていきます。人によっては、炎症が関節や骨に出ることも。とくに左右の鎖骨の連結部分にある胸鎖関節に、炎症が出やすいようです。

Q4.予防法と主な治療法は?

 原因が解明されていないため、はっきりとした予防法はありません。しかし、発症の要因となる喫煙を控え、感染症を起こさないよう、手洗いやうがいをすることは大切です。主な治療法は、皮膚の炎症を抑えるために、ステロイドとビタミンD3軟膏の塗り薬を用います。皮膚の生成サイクル(角化)が乱れて皮膚が乾燥してガサガサする状態を緩和し、角質を柔らかくする軟膏なども用いて、新しく水疱や膿疱ができないようにします。

Q5.なかなか治らない場合には?

 紫外線治療器を用いて、患部に紫外線を当て、免疫の働きを弱めることにより炎症を抑える治療を行うこともあります。痒みや炎症を抑えるために、抗アレルギー薬や漢方薬、重症の方には、皮膚の角化を正常化させるビタミンA誘導体を処方することも。どこかに細菌感染が潜んでいる可能性がある場合は、抗生物質を飲んで治療することもあります。骨や関節の炎症が出ている方には、体内の免疫反応を抑える生物学的製剤(注射)を用いることもあります。

監修:笠井 弘子 先生

北里大学北里研究所病院 
皮膚科部長
http://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp


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