photo: Naoki Muramatsu edit: Shiori Sekine, Hideki Taira(EATer)

指物益田の道具、家具[東京きらり人]

コラム, おでかけ

この街の、ちょっといいものつくる人


【指物益田の道具、家具】

《指物師》 益田 大祐さん

使う人と真摯に向き合い、
愛用できる“道具”をつくる。

 益田大祐さんは、墨田区で唯一の指物師(さしものし)。六代目 中村勘九郎さんが座主を務めて各地を巡業する“平成中村座”の大看板の制作や海外の見本市での実演などを行い、国内外から高い評価を受けている。

 「指物は伝統工芸のひとつで、天然の木材同士を組み合わせて道具や家具を制作する技法です。木材の一方にホゾという突起を、もう一方にホゾ穴という受けをつくって差し込みます」。釘はいっさい使わず、木の組み手も外側にはなるべく見せない。見えないところに、技術の粋を注ぎ込む。その制作はすべてオーダーメイドだ。「お客さんは歌舞伎役者や茶道関係の方が主で、一般の方の注文や相談は、知人からの紹介が多いですね」。歌舞伎役者の楽屋鏡台や三味線の譜面を置く見台、茶道の棚物や風炉先屏風などの専門的な道具をメインに、家庭で使う箪笥や本棚といった家具も手がけ、道具や家具の修理・修復、再生、 リメイクも行う。

 「オーダーを受けたら、図面やイラストをおこして仕上がりのイメージを共有します。使う人の住環境やライフスタイルに合ったものになるよう、お客さんとしっかり向き合って思いや要望を汲み取り、置き場所や使い方に適した木材の選定やサイズを検討するなど、あらゆることを加味して制作。楽屋鏡台をつくるときは、役柄(立役・女方)や体格、利き手、座り方なども見て高さを考え、その人にとって”いちばん使いやすいもの“を追求します。私たち指物師がつくるものは、一般のお店で扱っているような道具や家具ではなく、使う人に寄り添って制作した、その人が普段からよく使う“道具”でなければなりません」

 日本の伝統工芸は深刻な後継者不足に陥っている。「指物も例外ではなく、まずは技術を絶やさないようにしたいです。指物は海外の方にも興味を持っていただけていて、SNSにホゾで組んだものをアップしたところ、スペインの方が自分にもできたよと写真を送ってくれたことがあり、とても励みになりました。また、以前チェコの男性が弟子入り志願に来たのですが、うちではビザを出せないので宮大工を紹介したら、先日、岡山県で弟子入りしたというニュースを目にしました。技術を次世代につなぐのは日本人などと固執せず、海外の方でも関心があれば、どんなかたちでもいいので伝えていきたいですね」。

 指物の技術を守り、向上させ、伝えるためには、その素晴らしさを国内外にもっと発信しなければならない。時代に合わせて柔軟に捉え、模索することも重要だ。益田さんに託された使命は大きい。

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工房の看板。訪問の際の目印に。

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指物の伝統に益田さんの個性を重ねて制作した照明「波akari(なみあかり)」。自身の作品ではデザイン性の高いモダンなものを突き詰め、新たな指物へと昇華させている。


《見学や相談はこちらへ》

住吉(東京メトロ半蔵門線)
指物益田

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工房には墨田区が「小さな博物館」として認定する“指物博物館”が隣接。引き出しや文机をはじめとした指物を代表する道具、ホゾ見本などを展示している。見学や注文・修理の相談は電話、メール、ホームページのお問い合わせフォームで事前予約を。

墨田区立川4-6-5
Tel. 03-6315-8546
info@sashimonomasuda.tokyo
https://sashimonomasuda.tokyo


下町で木の香りに囲まれながら、
伝統文化を未来につなぐ益田さんの工房に、
ぜひ足を運んでください!

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案内人
黒須悟士さん

一般社団法人 TAKUMI - Art  du Japon 事務局長。日本の伝統工芸の保存と継承、未来に向けた発展のため、 精力的に活動している。


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