開業30周年を今月迎えたロイヤルパークホテルのアニバーサリーイヤーを盛り上げる「アンバサダー」のスタッフが、地元の粋な街、日本橋を心を込めてガイドする短期連載。最終回は1階シェフズダイニング「シンフォニー」で、朝食などを担当する調理部の稲熊雄輔さんが、明治17(1884)年創業の老舗和菓子店「寿堂」の職人の技を体験してきました。
女将が語る出会いのありがたさ
老舗や名店が並ぶ人形町通りの一角に、長のれんがひときわ歴史を感じさせる寿堂があります。こぢんまりとした店内には引きも切らず客が詰めかけ、女将(おかみ)の杉山青子さんが名物の「黄金芋」などを忙しく販売していました。
明治30年代から店頭に並ぶ黄金芋は白あんに黄身あんを使い、ニッキをふんだんにまぶした皮で包み、焼き芋をかたどったかわいらしい逸品。先輩シェフに勧められてお店を訪れたという稲熊さんもお気に入りで、「ニッキの香りが独特で後を引くおいしさ。長く愛されて、残っているのはすごいと思います」と感服します。
お店奥の仕事場は職人さんが朝早くから黙々と働いています。ベテランの森山清さんは木べらやはけなど道具を使った手作業で、ビワの実やバラなどを模した生菓子を一つ一つ手早く作り上げていました。本物の花びらのような繊細で、美しい仕上がりに、稲熊さんは「(カップなどを使わず)手作業で、大きさも、形もそろっていてさすがです」と驚きます。
この日は稲熊さんが和菓子作りに挑戦。森山さんから「力を入れずに軽く、花の先だけをこうして」と実演も交えて師事を受け、洋食と勝手の違う作業に戸惑いつつ、徐々に熱が入ります。
「少しの加減で形が全然変わってしまう、難しい」と漏らしますが、杉山さんから「手つきがいいわね」と女将の”お墨付き”をもらい、照れ笑いを浮かべていました。稲熊さんは「和食部門と一緒に仕事をする機会はないので、貴重な経験です。良いところを巧く取り入れたい」と意欲的です。
15歳から約60年にわたって職人を続ける森山さんに和菓子作りの心得を聞くと、「五感を大切にしています。色や形の美しさを見て、触っておいしそうと思い、香りや味わいを楽しめるようにしています」と教えてくれました。
創業130年を超え、街並みは移り変わりましたが、寿堂は変わらぬおいしさ、人情味あふれる職人、温かな接客と”古き良き”時代をいまに伝えています。その秘訣(ひけつ)を、杉山さんは「出会いのありがたさに尽きます。お客さまや従業員との出会いがあって初めて、前に進んでこれました」と謙虚に語ります。
日本橋人形町の”生き字引”ともいえる女将からかつての街の様子を聞き、稲熊さんは「いろいろな歴史が積み重なって、いまの姿があると知りました。伝統に新たな要素が加わって、より良い街になっていくんだと思います」とかみしめていました。
寿堂(中央区日本橋人形町2-1-4)
営業時間:9:00~18:30(日祝は17:00)
TEL 0120-480400
[きょうのアンバサダー]
稲熊雄輔さん
最近、朝食ブッフェのなかでも花形のオムレツ担当に抜擢され、「朝食はホテルの顔のようなもの。ご注文に応じて焦げ目をつけたり、白身だけでつくったりし、お客さまの好みを大事にしています」と話します。
感謝の気持ちを込めたサンキューランチ&ディナー
ロイヤルパークホテル(中央区日本橋蛎殻町2-1-1)は30年の感謝の気持ちを込めて、”39(サンキュー)”と銘打ったスペシャルランチを提供しています。洋食や和食、中国料理など館内4カ所のレストランが人気の一皿や特別メニューをそろえた充実の内容。夜は2人で3万円の30周年記念ディナーも用意し、お祝いムードを盛り上げています。
実施店舗:シェフズダイニング シンフォニー(1階)、鉄板焼き すみだ(20階)、日本料理 源氏香(5階)、中国料理 桂花苑(地下1階)
期間:6月30日(日)まで
メニューの詳細や予約は、https://www.rph.co.jp/restaurants/30th_39lunchdinner.html