最近ちょこちょこ地方に行くことが増えています。コロナが収まってきて、少しずつだけど日常が戻ってきています。晴れ渡る秋の空。おうちから出たくてウズウズしていましたから、待ちに待ったお出かけです。
先日は熱海へ花火を見に行きました。秋の花火大会。季節外れでも、久しぶりのお祭り気分に街が沸いています。空を覆う花火を見ていたら、コロナ禍が始まって以来、私たちが失っていたいろんな時間が一気に戻ってきて、不意に涙がこぼれてしまいました。会えなかった人、行けなかった場所、聴けなかった音楽…。一年半のあいだ、たくさんの時間と感情を私たちは失っていました。我慢していたよね(涙)。センチメンタルになったけど、次の日は思いっきり熱海歩きに出かけました。
週末の熱海は観光客であふれています。海から続く熱海銀座には、行列があちこちに。そして、おしゃれなカップルや女の子同士のグループが多いこと! みんなおしゃれ感度が高く、そんな彼&彼女たちがスマホや一眼レフカメラで撮っているのはレトロ建築。昭和の大観光時代、栄華を誇った温泉地の名残。古びた観光ホテル、時間が止まった映画館、スマートボール場、食品サンプルがかわいいレトロなレストラン。看板のフォントや古い建物など、すべてがかっこいい。路地裏はどこを切ってもフォトジェニックで、女子たちがこぞって写真を撮るホットスポット。友人と駅前のレトロ喫茶に入ると、お約束のクリームソーダとバナナパフェをオーダー。隣のおしゃれカップルも同じオーダーで写真を撮りまくっています。店主のおじいさんは数年前とまったく変わらずで、その素っ気ない感じもまたよし♡
こんな昭和レトロシティは熱海に限ったことではありません。先日訪れた富士吉田市の商店街もまさに昭和レトロ。そこで開催された「ハタオリマチフェスティバル」にはたくさんの人が訪れていました。ほかにも長野市の善光寺門前町だったり、レトロ街は日本全国に広がっています。その多くは、平成時代に観光地の客や生産地としての仕事を海外に取られ、街が冷え込んで、再生することもできずにシャッター商店街になっていたパターン。高度成長期の昭和がフリーズドライされて、いまに至るなのですね。
それがいまブームになっている一因は、私たちが「新しいもの」にもはや感動できないからかもしれません。都心はこのコロナ禍で人の流れが減りました。オリパラを機会とした再開発があちこちで進み、これからも大きな開発が進んでいきます。でもそれは既視感がある景色なのです。昭和レトロな場所は、そこに行かないと味わえない、デジタルを超えた経験ができます。建物は古いけど、現代ではつくれないデザインであり、まさに一期一会。そこには“情感”があります。昭和歌謡もそうだけど、その “情感”こそ、私たちがこのコロナ禍で失い、いま最も必要としているものかもしれません。
まだまだ気楽に海外旅行に出かけられない分、私たちは日本を楽しめる旅を探しています。観光名所のみをめぐったり、旅館内で楽しむだけではなく、その街を面で探索すること。昭和レトロ旅は、インスタやTikTokの録れ高もいいのです。いろんな面でコスパもよくて、心が満たされる旅は全世代におすすめです。
THIS MONTH'S CODE
#熱海へ花火
この日の花火大会は「静岡・熱海花火フェスティバル」。コロナ禍で仕事を失った煙火店を支援し、静岡の花火文化を守るために開催された。
#富士吉田市の商店街
機織りの街、富士吉田の本町通りにオープンした「喫茶檸檬」が話題。その通りから脇に入った新世界乾杯通りにはレトロなバーやスナックが。
#善光寺門前町
明治、大正、昭和時代の古い建築をリノベーションしたおしゃれな店舗が増えている。