女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
9月は防災月間。それに合わせてイオンが「女性にやさしい防災バッグ」を8月1日に発売した。バッグの中には23点の防災グッズが入っていて、そのうち7点が女性にやさしいアイテム。生理用品、クレンジングシート、ポケットミラー、化粧水、乳液、折りたたみブラシ、ヘアゴムが入っているが、この防災バッグ誕生のきっかけは、従業員の声だったという。商品を立ち上げた古橋みとりさんにお話を聞いた。
まずは備えのきっかけに
「防災関連の商品部スタッフに、女性が関わることは社内で初めてのことでした。私は3年前にこのスタッフに異動して、あるとき売り場の従業員から、女性用の防災用品についてお客様からの問い合わせが多いという話を聞きました。そこで、実際に被災した方などにヒアリングしていくと、女性ならではのお困りごとがあることがわかったんです」
防災関連商品の21年の売り上げは、5年前に比べて2倍。20年は、新型コロナウイルスの影響もあって、家庭備蓄も増加したという。
「災害への不安要素も変化しています。5年前までは、地震に備えることが一般的でしたが、ここ最近では、異常気象、帰宅困難、停電時の高層階での避難生活などへの備えも考える必要が出てきました。でも、何を揃えたらいいのかわからないという方も多かったので、今回オリジナル防災バッグを出すことにしたんです」
女性にやさしい防災バッグは、見た目も日常使いができそうなカラーリングで、サイズもコンパクト。まずは女性に手に取ってもらうことを重視し、本体5000円以下の価格にした。
「防災用品の大きな役目は、命を助けることです。そのために必ず必要になるグッズをまずは揃え、次に女性のためのアイテムを吟味しました。被災したその1日をまず凌ぐ。だから、ナプキンは2つしか入っていません。もちろん、それだけでは足りないことはわかっていますが、まずはさまざまなアイテムを入れることを優先しました。個人によって普段使っているものも違います。化粧水も合わない場合もある。毎日自分で使っているものを足していっていただいて、まずは備えのきっかけに繋がることが狙いです」
やさしい、の視点を取り入れて
イオンでは、防災コーナーの目につきやすいところにこのバッグを並べることを徹底(※)。同じ売り場内には吸水ショーツも置いている。店頭の目立つところに置くことでお客様の目に触れる機会も増え、防災への意識が高まるきっかけになればいいと古橋さんは言う。「ニーズが高まり、販売数が増えれば、コストも下げられ、お客様によりお買い得に提供できます。この防災バッグをもっともっとブラッシュアップしていきたいです」
女性の視点に立つことが、当たり前になるといい。それだけでなく、高齢者に向けた防災バッグなどもあったらいいかも、と古橋さんとそんな話をした。被災現場での悩みは、人によって違うはず。だからこそ、防災バッグも一人ひとりに合わせて、アレンジしていく必要がある。ちなみに、女性にやさしい防災バッグという名前はすぐに決まったという。「女性専用、というのは少し違うなって。あるスタッフが『やさしい』と発言してくれて、これだ!ってなりました」
防災現場に限らず、多様な人を想像することで、やさしい、の視点がさまざまな分野に広がっている。これを「ジェンダード・イノベーション」ともいい、このテーマは今後も深堀りしていきたいテーマのひとつである。
※女性にやさしい防災バッグの取り扱い店舗
販売エリア:本州・四国の「イオン」「イオンスタイル」250店舗
期間:2022年12月まで(店舗によって販売期間は異なります)


災害の現場では、心のケアもとても重要。「生理は、環境の変化で突然きてしまうこともあります。でもそういう時に、必要だとなかなか言いにくい現状もあります。また暑い避難所では、髪の毛が邪魔になったり、やっぱり鏡も見たいですよね」と古橋さん。防災バッグはプレゼントとして購入する人も増えているといい、家族で贈り合うのもいいかもしれない。

イオン・リテール株式会社
住居余暇本部
ホームファッション商品部
DIY&ホームメンテナンス担当
古橋みとり
忙しい日々で、防災意識はなおざりになってしまいがち。私も以前はそうでした。周囲に誰も知り合いがいなかったり、初めて一人暮らしを始める女性には特に意識してもらいたいです。
メトロポリターナ編集長
日下紗代子
10月からメトロポリターナ新編集長として就任。風邪を引かないのが強みだが、自身の身体のケアには少しウトイ自覚あり。

Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。
