本誌連載『映画でぶらぶら』でおなじみの月永理絵さんをナビゲーターに迎えて、映画のみならずドラマからも、見始めたら止まらない「シリーズ作品」を紹介!

ナビゲーター 月永理絵さん
編集者・ライター、『映画横丁』編集人。〈映画酒場編集室〉名義で書籍等の編集も手がける。映画館での鑑賞体験は特別なもの。でもときには家で過去の名作にゆっくり浸るのも、これまた大切な時間。
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《見ると夢中になる、名作映画シリーズ》
『勝手にしやがれ!!』シリーズ
大人たちの幸福な遊びの時間を描く、黒沢清×哀川翔のVシネマ
哀川翔主演のVシネマ、と聞けば仁俠ものが思い浮かぶが、本作は一味違う。主人公は、ヤクザ未満の便利屋、雄次と耕作の凸凹コンビ。社会の枠外で生きる大人たちの遊びの時間は、ひたすら幸せで、ただただ美しい。だがそんな幸福な時間は、最後、どこまでも真面目な革命映画『英雄計画』によって終わりを迎える。

映画監督・黒沢清が1990年代に手がけたオリジナルビデオ作品(Vシネマ)。便利屋を営む雄次(哀川翔)と弟分の耕作(前田耕陽)が毎度巻き込まれる大騒動を、一話完結型で描いた本シリーズは、映画ファンからの熱狂的な人気を誇る。
シリーズ一覧
『勝手にしやがれ!! 強奪計画』
『勝手にしやがれ!! 脱出計画』
『勝手にしやがれ!! 黄金計画』
『勝手にしやがれ!! 逆転計画』
『勝手にしやがれ!! 成金計画』
『勝手にしやがれ!! 英雄計画』
監督:黒沢清 出演:哀川翔、前田耕陽ほか
DVD販売中/U-NEXTで配信中
『次郎長三国志』シリーズ
笑って泣いて夢中で見てしまう、マキノ雅弘の時代劇シリーズ
笑って泣いて、陶酔感とともに夢中で見てしまう。『次郎長三国志』はまさにそんな映画だ。若き次郎長が渡世の道で名を挙げ大親分に成長するさまを全9部で描く。個性豊かな仲間はみな最高だが、なかでもお園(越路吹雪)がいい。気風がよく、情も深い。いざとなれば威勢よく戦う女。彼女が初登場する第6部は必見。

1950年代製作、清水次郎長一家の活躍を描いた、名匠マキノ雅弘による時代劇シリーズ。小堀明男演じる次郎長をはじめ、森繁久彌の森の石松、久慈あさみのお仲、加東大介の豚松など、名優たちの豪華競演に胸躍る。
シリーズ一覧
『次郎長三国志 次郎長売出す』
『次郎長三国志 第二部 次郎長初旅』
『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』
『次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港』
『次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路』
『次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家』
『次郎長三国志 第七部 初祝い清水港』
『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』
『次郎長三国志 第九部 荒神山』
監督:マキノ雅弘 出演:小堀明男、若山セツ子、久慈あさみ、森繁久彌
『次郎長三国志』第一集、第二集、第三集(すべて3枚組)
DVD販売中 各1万1000円 発売・販売元:東宝
《映画の名作への熱視線を楽しむ青春ドラマ》
『glee/グリー』
大人だからこそ熱狂する“負け犬”高校生の青春ミュージカル
高校の同級生たちに“負け犬”と呼ばれながらも、歌って踊るグリークラブで個性を発揮する少年少女たち。切磋琢磨する彼らの青春模様は、かつてティーンムービーに熱狂した大人の心も強く打つ。『ロッキー・ホラー・ショー』『グリース』など、過去のミュージカル映画へのオマージュも楽しい。

2009 年から6シーズンにわたり放映された、アメリカの大人気ドラマ。オハイオの高校を舞台にした、歌って踊るgleeクラブの青春劇。
製作総指揮:ライアン・マーフィーほか
出演:リア・ミシェル、コリー・モンティス、クリス・コルファー、マシュー・モリソンほか
『glee/グリー コンプリートブルーレイBOX』販売中
発売/ウォルト・ディズニー・ジャパン
『POSE/ポーズ』
トランスジェンダーの俳優たちが魅せる、華やかなボールカルチャー
社会に疎外されながらも誇り高く生きる、性的マイノリティの人々。ファッションとパフォーマンスで競う“ボール”に熱狂する彼らの姿を描く本作からは、ドキュメンタリー映画『パリ、夜は眠らない。』(1990)への敬意を強く感じる。トランスジェンダーの表象のあり方に一石を投じたドラマ。

『glee/グリー』の製作陣が手がけるドラマ。1980年代ニューヨークを舞台に、LGBTQの人々が、夢や愛を追い求める姿を描く。
製作総指揮:ライアン・マーフィーほか
出演:MJ・ロドリゲス、インディア・ムーア、ライアン・ジャマール・スウェインほか
『POSE/ポーズ』デジタル配信中