世界と日本から見る相互理解の重要性[相互理解の現在地]


 世界各国と比べて、日本における「相互理解」は、どのような問題を抱えているのだろう。UN Women(国連女性機関)日本事務所所長・石川雅恵さんに、日本の動向と、海外での取り組みについて教えてもらった。


人権問題とジェンダー平等から
相互理解を考える

 ジェンダー平等を推進している国連機関「UN Women(国連女性機関)」。その日本事務所所長の石川雅恵さんは、さまざまな国際問題の解決のためにも、相互理解が重要と考えている。その大きな問題のひとつは、人権問題だという。

 「『人権』と聞くと、とても難しい話ととらえる人もいるかもしれませんが、その問題の多くは本人がやりたいと思ったことを選択できないこと”です。そう考えると、身近にもいろんな人権問題が見えてくるのではないでしょうか」

 例として、女子高生の卒業後の進路について「女の子なら短大で十分」「女の子なら東京に出なくても地方の大学でよい」といったステレオタイプな意見は、女性の選択を奪ってしまう。男性に対して「一家の大黒柱として生きねばならない」といった発想を持つことも同様だ。いつのまにかすり込まれた価値観は、なかなか自分では気づくことができない。身近なところにも、人権問題は存在している。

 日本は世界的にもジェンダー平等達成の速度が遅く、女性の活躍推進は、2016年から国を挙げて取り組んでいるプロジェクトだが、思うように成果が見えないという現実がある。その要因のひとつとして、日本人が「失敗」をことさら避ける傾向が関係しているのではないかと考えているという。

 「現在、ジェンダー平等が進んでいると言われているヨーロッパの国でも、昔からそうだったわけではありません。失敗を教訓にしながら、対話を重ねていまにいたっています。失敗を恐れている限り、イノベーションは生まれません」

 社会には当然いろいろな意見を持った人達がいる。各人が互いを理解するためには、対立ではなく、受容していくことが大切だと、石川さんは続ける。

 「仮に同意ができないことがあっても、『あなたはそう思っていても、私はこう思っている』と主張し、認めあえる社会を目指すことが大切ですね」

 世界のさまざまな取り組みに目を向け、理解を深める姿勢から、今後のためにできることが見えてくるかもしれない。UN  Womenのホームページでは、世界の情勢や活動報告が更新されている。国外の動向もチェックして、今後の未来を考えるヒントをもらおう。

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国連女性機関 UN Women
日本事務所 所長
石川 雅恵さん


 

CASE STUDY IN KOREA

韓国「クオータ制」

女性議員の割合を30%以上にする制度

 韓国で2000年に導入された、国政選挙・地方選挙で候補者の一定比率を女性に割り当てる制度のこと。国政選挙では、各政党の比例代表の半数以上が女性候補者に。地方議員の女性の割合も急増しているという。


CASE STUDY IN BURKINA FASO

ブルキナファソ(西アフリカ)「ハズバンドスクール」

幸せな家庭を築くために男性が学ぶスクール

 西アフリカのブルキナファソでは、日本にかつてあった「花嫁学校」のようなものが、結婚を希望する男性に向けて「ハズバンドスクール(花婿学校)」として開かれている。料理や裁縫などではなく、女性の月経(生理)や妊娠・出産に関する知識や傾向などを学べるという。婚姻を控える若い男性が、幸せな家庭を築くために必要な知識を学ぶ機会を得ている。


CASE STUDY IN VIET NAM

ベトナム「男性擁護クラブ」

男性による女性への暴力防止のボランティア研修

 ベトナム・ダナンでは、幅広い年齢の男性を対象として、女性や女児に対する暴力防止のための研修が行われている。暴力が生まれる要因をはじめ、人権やジェンダー平等などについて、1年間にわたり学んだ後、研修を終えた男性は地域社会のコミュニティに戻り、学んだ知識を発信していく。社会全体に正しい認識を伝えていく流れが生まれているという。


国連女性機関 UN Women が発信する情報はこちらから

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https://japan.unwomen.org


「He For She」

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UN Women(国連女性機関)が主導する、ジェンダー平等のための連帯運動。企業などとさまざまな分野の男性リーダーを巻き込み、世界中の人々がジェンダー平等の実現のために参加し、変革の主体となれるような機会を提供している。
画像提供/UN Women(国連女性機関)日本事務所


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