秋は、「国際ガールズ・デー」や「世界メノポーズデー」、「国際生理の日」に「乳がん月間」と、女性のココロとカラダや社会のあり方について考えるきっかけとなる季節。フェムテック&フェムケア関連のイベントもたくさん開催され、メトロポリターナが推進する「フェムケアプロジェクト」も、今月で1周年。あらためて女性の健康や社会課題を考えるにはいいタイミングだ。正しい知識と想像力から生まれる思いやりは、きっと女性のエンパワーメントにもつながるはず。ますます進化を続ける、フェムテック&フェムケアの最新情報をアップデートしよう!
フェムケアプロジェクト1周年スペシャル対談!
「エンパワーメントの現在地と未来」
10月11日は、「国際ガールズ・デー」。2011年に国連総会によって定められ、今年で12回目を迎えるこの国際デーは、どのようなことを目的としているのか? 発起団体である公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンの日本理事長・池上清子さんに、本誌編集長・日下が話を聞いた。

左)プラン・インターナショナル・ジャパン理事長 池上清子さん 右)メトロポリターナ編集長 日下紗代子
国際ガールズ・デーとは?
日下:メトロポリターナを発行する産経新聞社は、昨年の10月にフェムケアプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトを通じて、フェムテック(※1)・フェムケア(※2)といった分野で活動する人たちの話を聞き、女性のエンパワーメント(※3)の必要性を感じています。そこで、「国際ガールズ・デー」について、詳しくお話を聞かせてください。
池上:もちろんです。国際ガールズ・デーは、女の子の権利とエンパワーメントの促進を目的とした国際デーです。とくに伝えたいのは、途上国の女の子たちが置かれている状況です。彼女たちは、経済的、文化的な理由で学校に通えなかったり、児童婚を強いられている(※4)。“女の子だから”というだけで、さまざまな制約があるのです。そんな現状を変えていくために、まずは多くの人にその不平等を認識してもらいたい。そのためにガールズ・デーは制定されました。
日下:具体的にはどのような活動をしているのですか?
池上:たとえば日本では、途上国の女の子たちに来日してもらい、彼女たちが置かれている状況を日本の女の子たちに話してもらったり、ゲストを招いてシンポジウムを開催したりしています。ちなみに今年のガールズ・デーのテーマは「気候変動」です。
女の子と気候変動!?
日下:ガールズ・デーと気候変動!?どのような関係があるのですか?
池上:たとえば、温暖化によって作物が不作、食料難になったとします。大人は食料を調達するために、家の外に出て、女の子は家事や子守りをさせられる。そうすると彼女たちの学習機会が奪われてしまうのです。経済的に困窮すれば、人身取引につながることもある。つまり、社会や生活に負荷がかかれば、そのしわ寄せが女性にきてしまうんです。
日下:ということは、気候変動に限らず、コロナによるパンデミックや、景気悪化でも同じことが起きるということですよね。しかもそれは、途上国に限ったことではないと。
池上:その通りです。パンデミックで景気が悪化すれば、まずは弱い立場の労働者が働く機会を奪われます。日本の「ジェンダーギャップ指数(※5)」は、146カ国中116位。先進国としては著しく低い順位です。非正規雇用者の女性割合も高い(※6)。つまり、女性は人員削減の対象になりやすいということです。
日下:リモートワークも、密室でのDVにつながりやすいと聞いたことがあります。
池上:そうなんです。だから、パンデミックによってジェンダー・パリティ(※7)の達成は、一世代分遅れたという調査(※8)もあります。いまのペースのままだと、達成には132年かかるそうです。
エンパワーメントはなぜ必要?
日下:途方もなく長い道のり…。だからこそ、女性のエンパワーメントが重要ということですね。達成を早めるためには、フェムテックのような、イノベーションも必要だと感じました。
池上:テクノロジーは、上手に使っていきたいですよね。もちろんそれだけではなく、不平等を変えるためには、行政や企業が、女性をエンパワーする制度(※9)をつくることも必要です。そしてなによりも、まずは一人ひとりの意識を変えることが大切だと思っています。じつは、私は男性にもエンパワーメントが必要だと感じています。
日下:というと?
池上:男性の意識を変えるための教育や啓発をする必要があるということです。
日下:女性が抱える課題について、男性の意識変革は進んできている気はしますが、まだまだ十分とは言えない状況ですよね。
池上:だから、男性も女性もともに、問題意識を共有する。そして、性別や立場を超えて、それぞれの違いを認め合う。そうすれば、みんなで協力して問題解決に取り組めるはずです。
日下:ダイバーシティ(※10)とインクルージョン(※11)。多様性を相互に理解し認め合うことが、よりよい未来へ向けての一歩になるということですね。
池上:そう思います。ガールズ・デーの目的も、日本の女の子たちに、自分がいま当たり前にできていることであっても、別の誰かは諦めざるを得ない状況にあるということを伝えることです。そして“女の子だから”を理由に何かを諦める必要はない、ということを知ってもらいたい。その気づきが、エンパワーメントを生み出し、女の子の権利を守るきっかけになるはずです。
日下:私たちもフェムケアプロジェクトを通じて、その気づきを広めていきたいです。池上さん、今日はありがとうございました!
※1 「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」をかけ合わせて生まれた、女性のライフステージにおける健康課題を、テクノロジーで解決するサービスやプロダクト
※2 「Female(女性)」と「Care(ケア)」をかけ合わせて生まれた、女性の心身のケアをするサービスやプロダクト
※3 女性が社会的な制約を受けることなく、本来持っている潜在能力を発揮し、自らの意思決定により自発的に行動できるようにすること
※4 地域に根強く残る慣習や組織の名誉を守るために、18歳未満での結婚を余儀なくされる。早すぎる結婚により、早すぎる妊娠や教育の機会の喪失など、女の子の未来を奪うさまざまな弊害が問題視されている
※5 内閣府男女共同参画局 「ジェンダーギャップ指数(2022)」より
※6 内閣府男女共同参画局 Ⅰ-2-7図「年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移」
※7 ジェンダー公正。賃金や暴力被害を受けた性別の割合、国会議員の男女比率など、特定の指標で男性と女性の数値の違いを明らかにし、改善していくことで公正な社会を目指していくこと
※8 世界経済フォーラム「ジェンダーギャップレポート 2022」より
※9 人種、民族、宗教、性別などを基準として、政治における議員や閣僚、企業における役員などの一定数を、社会的に不利益を受けている者に割り当てる「クオータ制度」など、社会全体で女性の活躍推進に向けて動いていくこと
※10 多様性。性別、人種、宗教、趣味嗜好など、さまざまなバックグラウンドを持つ個人が組織の中にいる状態
※11 多様な人々が互いの個性や価値観を尊重し合い、組織の中で一体感をもって働いている状態
[PROFILE]
プラン・インターナショナル・ジャパン 理事長
池上清子さん
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連本部、ジョイセフ(JOICFP)、国連人口基金(UNFPA)などを経て、2016年に公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事長に就任。長きにわたり、途上国における女性の自立支援に取り組む。
プラン・インターナショナルとは
女の子が本来持つ力を引き出すことで地域社会に前向きな変化をもたらし、世界が直面している課題の解決に取り組む国際NGO。世界75カ国以上で活動し、世界規模のネットワークと長年の経験に基づく豊富な知見で、弱い立場に置かれがちな女の子が尊重され、自分の人生を主体的に選択することができる世界の実現に取り組んでいる。
詳細はこちら
https://www.plan-international.jp/

フェムケアプロジェクトとは
メトロポリターナを発行する産経新聞社が昨年10月に立ち上げた、女性特有の健康課題や働き方に関する情報発信を通じて、相互理解を目指すことをビジョンに掲げたプロジェクト。